──さまざまな事業領域・テクノロジーの企業に投資していますが、出資の基準は
宮地さん(以下敬称略):投資先は財務リターンと戦略的リターン双方のバランスを見ながら決めています。財務リターンについては市場規模や競合優位性などを勘案しながら出資しています。戦略リターンについては、出資後どのような協業の形が描けそうかをイメージしています。
──戦略リターンについて、具体例を伺えますか
宮地:(出資先で、SaaS型ECシステムを手掛ける)SUPER STUDIOについては、オフラインに強みを持つわれわれと、オンラインに強みを持つ同社でOMO(Online Merges with Offline、オフラインとオンラインの垣根を意識させないマーケティング)ができないかと思い出資しました。
同社とは実際に、三井不動産の物件である宮下パーク(東京都渋谷区)に「THE [ ] STORE」というスペースを出店しました。これは、オンライン発のECブランドに、オフラインでも(試験的に)出店してもらう場で、人や什器などはこちらで用意しました。デジタル広告の単価が上がっており、オンラインのECブランドによるオフラインへの進出ニーズがあるのですが、一方で店舗運営のノウハウや人手が不足する問題があるという背景を踏まえたソリューションです。
また、ECブランドは会員獲得をした上で、それを今後のマーケティングに生かすことも重視しているのですが、オフラインでの買い物は(会員獲得につながらず)マーケティングにつながらないケースもあります。そこでSUPER STUDIOのソリューションを組み合わせ、会員獲得やその後の分析ができる場として提供しました。
──注力しているテクノロジー・事業領域は
宮地:特にテクノロジーを基準にしているわけではありません。事業領域も、適宜入れ替えながらやっているので「絶対にこれだ」というものはないのですが、OMOやエネルギー、モビリティは注力領域と思います。
──創業者について見る点は
宮地:バックグラウンドなどを見るには見るんですが、重要性が高いかといわれると、明確な基準にはなっていないかと思います。
もちろん連続起業家に対しては経験があると感じますし、イグジットの蓋然(がいぜん)性も高いと思いますが、われわれはCVCなので、出資後の連携を見据えながら出資しています。ただ、出資後にも一緒にやっていけそうかどうかの肌感は大事にしています。
──ITエンジニアの数・質などは気にされますか
宮地:そこはあまり考えていません。
──事業シナジーを重視される印象ですが、M&Aの可能性は
宮地:特に決まったものはなく、ケースバイケースです。実際にM&Aをした事例はまだありません。三井不動産の長期経営計画ではM&A投資枠として4000億円を設定しているので、将来的に実施する可能性はありますが、(現時点では)明確にする・しないというのは定めていません。
──SUPER STUDIOやメタバースのcluster、電動キックボードのLuupなどは三井不動産との連携が比較的想像しやすいのですが、一方でSaaS管理のジョーシスなどは不動産とのシナジーが想像できません。どのような協業を想定しているのでしょうか
宮地:ある程度協業を想像しながら投資をしていますが、ジョーシスについてはまだ実現しておらず、公開できているものがありません。
──いわゆる“SaaSバブルの崩壊”や生成AIの勃興など、現状はスタートアップ業界が大きく動いているところだと思います。一連の動向について、何か思うところがあれば教えてください
宮地:生成AIや政府の「スタートアップ5か年計画」もあり、徐々に回復トレンドにあるのかなと思います。これまで苦しかったスタートアップもあると思いますが、しっかり事業成長できたところとそうでないところがある程度明確になってきたのではと。魅力的なスタートアップは、マーケットに依存せずしっかり積み重ねられたと思います。
スタートアップを巡る環境については、優秀な人がスタートアップに入ることが増えたと思うので、ここからより活発になるのではないかと。全体的にポジティブなトレンドではないかと思います。
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