工場は、北海道赤平市の広大な敷地内にある。かつて、サムソナイトと技術提携を結んだエースが日本で初めてスーツケースの国内生産を始めたのが1964年。当時の工場は小田原にあって、そこが手狭になったということで、1971年に現在の赤平に移転している。その後、エースは海外展開に乗り出すため、サムソナイトとの長年の契約を終了し、自社ブランド「プロテカ」を2004年からスタートさせた。
工場の中には展示室もあり、そこにはエースの自社ブランド「プロテカ」の第一号「マニフィコ」から最新のものまでが並び、スーツケースの変遷が一目で分かるようになっている。とはいえ、スーツケースは基本的に同じような形をしているし、結局、シェルの素材と細部のデザイン以外には大きな違いはない。
それこそ、マニフィコを今使っていても、外見上は多少デザインが個性的だと思われる以外に違いはない。普通に見過ごされると思うし、使う方も、現在の最先端のスーツケースを知らなければ、多少の不便さはあっても使い続けられるのではないか。
それだけに、自分が使っているプロテカ360が、とても先鋭的な製品だということを感じることもできた。これだけのスーツケースを作り続けてきた上での、最新型の1つというわけで、そこに使いやすさや機能の向上がないわけがないのだ。
例えば、今回、説明を受けて知ったのだけど、プロテカのキャスターに内蔵されたボールベアリングは現在、ミネベアミツミ製のものが使われている。この連載で取り上げたエレコムのトラックボール「IST(イスト)」に使われているのもミネベアミツミ製だったが、実際、小さなベアリングにおいて、世界有数のメーカーだ。実際、プロテカ360が、ドイツの石畳の上でも走行がスムーズだったことを思いだした。
今回、まずは「プロテカ チェッカーフレーム」のシェルの成型過程を見せてもらったのだけど、これが何と射出成型かと思っていたら、ルーダーで素材をシート状に成型したものを加熱し、金型に開けられた無数の極細の真空穴から強い力でバキュームし、圧空、真空状態にして金型(凸)に沿わせることで製品の形を作る「真空成型」で作られていた。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR