このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。
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8月に開催したセキュリティカンファレンス「DEF CON 32」において、ドイツのダルムシュタット工科大学に所属する研究者らが電気自動車をゲームコントローラーに変換する改造方法を「Redefining V2G - How to use your vehicle as a game controller」というタイトルで発表した。車両の内部通信システムを活用してゲーム操作を可能にする。
電気自動車を乗り物だけでなく、蓄電池として活用する「Vehicle-to-Grid」(V2G)を独自に再解釈し「Vehicle-to-Game」(V2G)という技術を提案したのが今回の研究内容となる。
研究では「フォルクスワーゲンID.3」などの電気自動車を対象とし、車両から必要な制御情報(ステアリング角度、アクセルペダルの位置など)を取得し、この情報を使用してゲームデバイスをシミュレートする。この技術の核心は、車両のCAN(Controller Area Network)バスへのアクセスにある。CANバスは、車両内通信システムで、さまざまな電子制御ユニット(ECU)間のデータ交換を可能にしている。
研究者らは、車両のデータにアクセスする方法として、「内部CANバスモード」と「UDSモード」の2つを開発。内部CANバスモードでは、車両の内部CANバスに直接アクセスし、必要な情報を取得する。一方、UDSモードでは、OBD-II(On-Board Diagnostics II)ポートを介してUDS(Unified Diagnostic Services)プロトコルを使用して車両情報を取得する。
これらのデータを解析し、ステアリングホイールの角度やアクセル、ブレーキなどの情報を抽出し、それをゲームの入力として変換する。
このシステムは、USBやBluetoothを介してゲーム機に接続できる。操作モードとして「Virtual Gamepad mode」と「Bluetooth Controller mode」の2つを用意している。前者は、CANバスを直接ゲームを実行するコンピュータに接続してXBOX 360コントローラーをエミュレートする。後者は、Raspberry Pi Zero WHとCAN Hatを使用してBluetoothコントローラーをエミュレートする。
これにより、システムは実際の車両の動きをゲームパッドデバイスとしてシミュレートすることができ、車をリアルなゲームコントローラーとして機能させられる。研究チームは、安全性を最優先に、ゲーム中に車が動き出さないよう注意を払い、バッテリーの消耗にも気を付ける必要があることを強調している。
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