スポットワーク市場での成功には、ユーザー数の拡大だけでなく、加盟店の開拓も重要な要素となる。コンシューマー向けに圧倒的な顧客基盤を誇るメルカリだが、法人向け接点は弱みだ。スポットワークの登録事業所も、タイミーの25万4000件超に対し、メルカリ ハロは約5万件にとどまる。
加盟店開拓の強化について、山本氏は「メルカリには複数の事業者獲得事業がそろってきている」と述べる。メルカリにはもともと法人向けの営業チームはなかったが、メルペイの加盟店開拓をはじめ、メルカリShops、そしてメルカリ ハロと複数の対法人向け事業が増えてきている。これらを横断的に活用した営業活動を展開していくという。
しかし加盟店開拓において、先行者の優位は強い。その一つが、スポットワークで課題となる社会保険料だ。事業所側はスポットワークを活用するにあたり、社会保険料負担が発生しないように月間の報酬額をコントロールしている。実際、同一企業で社会保険料が発生する月間8万8000円を超えないように、仕事の申し込みを制限する機能をタイミーは設けている。
もし事業所が複数のスポットワークサービスを併用した場合、同一人物が合計で8万8000円を超えていないか自ら確認し、超えていたら社会保険の手続きをしなくてはいけないわけだ。このような事務負担は、事業所側にとって複数のスポットワークサービスを利用するハードルとなる。このため、先行してサービスを展開し、多くの加盟店を獲得しているタイミーには一定の優位性があると考えられる。
しかし、山本氏は「働きに来る人がいるかが重要。働く人がどれだけいるかが重要」とも述べ、ユーザー基盤の強さで挽回する考えだ。
メルカリには、後発でありながら市場を制した経験がある。フリマアプリ市場では、先行していたフリルに対し、圧倒的な資金力と強力なマーケティング戦略で急速にシェアを拡大し、最終的にトップの座を獲得した。
この成功体験は、スポットワーク市場での戦略にも生かされる可能性が高い。メルカリの持つ巨大なユーザーベースと、複数事業間のシナジーは、タイミーにとって無視できない脅威となるだろう。しかし、タイミーにも先行者としての強みがある。特に加盟店との関係性や、スポットワーク特有の課題に対する深い理解は、簡単には覆せない優位性だ。
両社の競争は、スポットワーク市場全体を活性化させ、日本の労働環境に大きな変革をもたらす可能性を秘めている。メルカリの参入により、市場の認知度が高まり、より多くの人々がスポットワークという新しい働き方に触れる機会が増えるだろう。スポットワーク市場は、まさに第二の成長期を迎えようとしている。
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