フリルが直面した2つ目の大きな課題は、十分な資金力の欠如だった。
「事業会社の出身で初めての起業だったため、お金を稼ぐ経験はあったが、何億ものお金を集めて使う経験に乏しかった」と堀井氏は振り返る。この経験不足が、急成長するフリマアプリ市場での競争において致命的な弱点となった。
メルカリが大規模な資金調達を行い、積極的なマーケティング投資と手数料無料戦略を展開する中、フリルは十分な対抗策を打てなかった。堀井氏は「同じぐらい資金調達してやり返すしかなかった」と当時を振り返るが、それを実行するだけの準備が整っていなかった。
日本の主要なベンチャーキャピタル(VC)の多くがすでにメルカリ陣営についていたことも、フリルの資金調達を困難にした要因だった。「私たちが追加の資金調達の交渉をしても、もうメルカリに投資することが決まっているので難しいです、といわれるだけだった」と堀井氏は当時の苦境を語る。
この苦い経験は、現在のB/43の事業戦略にどう反映されているのか。実は、現在のスタートアップを取り巻く環境は、フリル時代とは大きく異なっている。
「現在の投資市場はクラッシュして徐々に回復しつつある段階です。そのため赤字を許容してでも急激なユーザー獲得を目指すような資金提供をするVCはほとんどありません」
この「冬の時代」とも呼べる厳しい資金調達環境下で、B/43は慎重かつ戦略的なアプローチを取っている。堀井氏は「今の市況が許す範囲で成長を目指している」と語る。フリル時代のように大規模な資金投入による急成長が可能な市況ではなく、現在は持続可能な成長モデルが求められているわけだ。
もちろん、将来的な資金調達の可能性も視野に入れている。堀井氏は「ファイナンスサイドで負けないような勝負ができるかが重要」と強調する。これは、将来の成長機会を逃さないための準備だといえる。
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