ゲーム内の地形制作を担当する、リードアーティストの竹原学さんは、ティアキンの開発で、前作の2.5倍の広さを持つ世界の制作に取り組んだ。竹原さんが直面した最大の課題は、この膨大な規模の地形を限られた人員でいかに効率的に制作するかということだ。しかし、単純にデータ制作を効率化するだけでは不十分だった。
重要なのは、ゲームの遊びに基づいたアート表現を想像し、最終的なゲーム体験にどう結び付くかをアーティスト自身が確認すること。竹原さんはこの課題に対して“効率化と創造性は対立概念ではない”と考え、2つを両立させる方法を模索した。その一例が200以上ある洞窟の制作プロセスだ。
竹原さんのチームは、遊びの要素を手作業で設計しつつ、それ以外のアート要素の適用を自動化する「洞窟システム」を開発した。このシステムにより、レベルデザインとアート制作を並行して進めることが可能になり、作業効率が向上したという。
洞窟システムの成功を受けて、このアプローチは他の地形制作にも展開。空島の自動3Dモデル生成や、地底の鍾乳洞の自動生成など、さまざまな場面で活用した結果、洞窟システムは費用対効果の高いソリューションとなった。
さらに、この取り組みは副次的な効果も生んだ。当初は手作業にこだわっていたアーティストたちが、自ら自動化を提案するようになったのだ。これは、効率化の中でも大事なものを見落とさないように心掛けた結果でもあった。
地形のデバッグ効率化も重要な課題だった。例えば、ハイラル全土に1000体以上存在するコログの確認作業を効率化するため、コログ自動撮影システムを導入。これにより、地形変更の度に全てのコログを目視確認する必要がなくなり、作業時間が大幅に短縮できた。
地形モデルの穴を見つけるための「穴探しツール」も開発。このツールは、プレイヤーが地形の裏側に入り込んでしまうような危険な穴を効率的に見つけ出すために設計したもので、これによってゲーム体験に重大な影響を与える大きな穴と、影響の少ない小さな穴を大まかに判別することが可能になった。竹原さんのチームは、限られたリソースを効果的に活用するため、ゲーム体験に支障を来す大きな穴の修正を優先した。
竹原さんは、これらのツールの開発と活用により、ゲーム制作のサイクルをより多く回せるようになったと述べる。「大事なものをなくさないために、その手段を考え、創造する」ことの重要性を説き、効率化の背景には常に面白いゲームを作るという目的があることを強調した。さらに、チーム内の透明性が高まったことで、問題解決がよりスムーズになったと付け加えた。
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