ゲームの動作仕様の確認などを手掛ける仕事、QAエンジニアの大礒琢磨さんは、ティアキンの開発において、QAの役割を根本から見直した。従来の「バグのないゲームを目指す」アプローチから「面白くてバグがないゲーム」を目指す新たな方針を打ち出した。
大礒さんは、良質なゲーム開発には「制作と確認のサイクル」と「バグ検出のサイクル」の両立が不可欠だと考え、新しいデバッグツールの開発に着手。「敵生成ツール」や「ワープツール」「オブジェクト情報表示ツール」「アイテム管理ツール」などを開発した。
敵生成ツールでは、任意の場所に即座に特定の敵キャラクターを出現させられる。これにより、敵キャラクターの挙動やバランスのテストが迅速に行えるようになった。ワープツールは、広大なゲーム世界内の任意の場所への瞬時な移動を可能に。これにより、特定の場所のテストや確認作業が大幅な効率化に成功した。
オブジェクト情報表示ツールを使うと、ゲーム内のオブジェクトに関する詳細情報(配置した担当者、配置日時、前作からの継続使用かどうかなど)をその場で確認できる。これにより、オブジェクトに関する問題が発生した際の迅速な対応が可能になった。
アイテム管理ツールでは、ゲーム内のあらゆるアイテムを即座に入手したり、装備を自由に変更したりできる。これにより、特定のアイテムや装備状態に関するテストが容易になった。
これらのツールは当初、開発者向けに作ったが、大礒さんは、開発者とテスターの間にある「情報の隔たり」と「ツールの隔たり」という課題に着目。これらの隔たりを解消することで、テスターがより効果的にゲームの品質向上に貢献できると考えたのだ。
そこで、これらの高度なデバッグツールをテスターにも提供することにした。具体的には、開発者が使用している各種ツールをテスターも使えるようにし、開発ウィキやチャットツール、タスク管理ツールなども共有。さらに、開発者同士のミーティングにもテスターを参加させ、最新の開発情報をリアルタイムで共有した。
大礒さんは、単にツールや情報へのアクセスを提供するだけでなく、テスターがこれらを適切に使いこなせるよう、ハンズオン資料も提供した。必要に応じて、Houdiniなどの有償ライセンスのツールも提供できるよう環境を整えた。
この取り組みにより、テスターはより深いゲーム理解のもとでテストを行えるようになった。結果として、単なるバグ報告だけでなく、ゲームプレイの改善提案や、開発者が見落としていた問題点の指摘など、より質の高いフィードバックが可能になった。
さらに、この協力体制は予想以上の効果をもたらした。テスターからは「チームの一員という意識を持てるようになった」という前向きな声が聞かれたのだ。これは、開発者とテスターが同じ視点から、同じ目標に向かってゲーム制作に取り組めるようになったことを意味している。
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