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ElasticsearchとKibanaがオープンソースライセンスに復帰、Elasticが発表 「AWSがフォークに投資し、市場の混乱は解決された」と

» 2024年08月30日 15時00分 公開
[新野淳一ITmedia]

この記事は新野淳一氏のブログ「Publickey」に掲載された「ElasticsearchとKibanaがオープンソースライセンスに復帰、Elasticが発表。AWSがフォークに投資し、市場の混乱は解決されたと」(2024年8月30日掲載)を、ITmedia NEWS編集部で一部編集し、転載したものです。

 オランダに本社を置くElasticは、ElasticとKibanaのライセンスにオープンソースライセンスであるAGPLを追加すると発表しました

 3年前の2021年、同社はElasticをマネージドサービスとして提供しているAWSを名指しで非難しつつ、ElasticのライセンスをApache License 2.0から、商用サービス化を制限する「Server Side Public License」(SSPL)と「Elastic License」のデュアルライセンスへ変更しました。

 それ以来、ElasticとKibanaはオープンソースではなくなっていました。

 同社CEO Shay Banon氏は、今回のオープンソースへの復帰を発表したブログの中で「It is hard to express how happy this statement makes me. Literally jumping up and down with excitement here.」(この発表がどれほど私を幸せにしてくれているか、表現できない。文字通り、飛び上がるほど嬉しい)と書いています。

Elasticはオープンソースに戻る時を待っていた

 Elasticは3年前、当時オープンソースであったElasticsearchを用いてAWSが「Amazon Elasticsearch Service」を提供していたことを商標違反などと指摘して強く反発し、商用利用を制限する非オープンソースのライセンスに変更した経緯がありました。

 AWSはこれを受けてElasticsearchをフォークして独自にオープンソース版の開発を開始。サービス名称も「Amazon OpenSearch Service」へと変更し、商標問題は解決します。

 今回、Elasticがオープンソースライセンスを再び採用することにしたことの背景には上記のように、AWSによるフォークへの投資と商標問題の解決があると、Shay Banon CEOは発表の中で次のように説明しました。

3 years later, Amazon is fully invested in their fork, the market confusion has been (mostly) resolved, and our partnership with AWS is stronger than ever. We were even named AWS partner of the year. I had always hoped that enough time would pass that we could feel safe to get back to being an Open Source project - and it finally has.

フォークから3年経ち、Amazoはフォークに十分に投資し、市場の混乱は(ほぼ)解決され、私たちとAWSとのパートナーシップはこれまで以上に強固なものとなりました。 私たちはAWSの年間最優秀パートナーにも選ばれました。 私は、私たちがオープンソースプロジェクトに戻っても大丈夫だと思えるだけの時間が経過することをいつも願っていました。そしてその時がやってきたのです。

 Shay Banon CEOはこうなることを3年前にある程度想定してライセンスを変更したのだと、次のように書いています。

we changed the license, knowing it would result in a fork of Elasticsearch with a different name and a different trajectory. It’s a long story.

(3年前に)私たちはライセンスを変更しました。それによって、名称も方向性も異なるElasticsearchのフォークが生まれることは分かっていました。話せば長くなります。

 そして想定通りにElasticsearchがAWSによってフォークされたことで、それが十分にElasticsearchと別のものとして定着するまで待っていた、ということなのでしょう。

3年前、Elasticは商用サービスを制限へ

 2019年から今回までの経緯を振り返ります。

 2019年、オープンソースで製品を開発している企業の間で、AWSなどの大手クラウドベンダがオープンソースで開発されている製品群を利用してマネージドサービスを提供して大きな利益を獲得しているにもかかわらず、コミュニティへの還元がほとんどないことへの不満が表面化します。

参考:Redis、MongoDB、Kafkaらが相次いで商用サービスを制限するライセンス変更。AWSなどクラウドベンダによる「オープンソースのいいとこ取り」に反発

 そして2021年1月、ElasticはAWSを名指しで非難し、ライセンス変更を発表します。

 このときの内容は主に2つ。1つはAWSが「Amazon Elasticsearch Service」という名称でサービスを提供しており、Elasticsearchの商標違反だとしている点。もう1つは、AWSが独自のElasticsearchの独自ディストリビューションを開発したことでコミュニティの分断を引き起こしている点です。

参考:AWSをElasticが名指しで非難。ElasticsearchとKibanaのライセンスを、AWSが勝手にマネージドサービスで提供できないように変更へ − Publickey

 AWSはこれによりElasticsearchをマネージドサービスとして継続して提供できなくなります。

AWSはElasticをフォーク、独自開発へ

 2021年4月、AWSはこの状況を受けてElasticsearchとKibanaをフォークし、自身でオープンソースの開発を行うことを表明しました。「Amazon Elasticsearch Service」の名称も「Amazon OpenSearch Service」に変更されます。

参考:AWS、ElasticsearchとKibanaのフォークによる「OpenSearch」プロジェクトを発表。Elasticとの溝は埋まらないまま

 2022年、ElasticとAWSは商標問題が解決したと発表しました。

参考:Elastic、AWSとの「Elasticsearch」に関する商標問題が解決したと発表。今後「Elasticsearch」を名乗るのはElasticのみに

 そして今回、ElasticはElasticsearchとKibanaがオープンソースライセンスに復帰することを発表しました。

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