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「電脳メガネ」ついに実現? Meta、真のARグラス「Orion」を披露 “筋肉の信号で操作”も可能に

» 2024年09月26日 04時40分 公開
[山川晶之ITmedia]

 米Metaは9月25日(現地時間)、自社カンファレンス「Meta Connect 2024」にて、開発中のARグラス「Orion」を発表した。同社が10年の歳月を経て作り上げたARグラスで、広視野角ディスプレイや、EMG(筋電図)で操作できるニューラルインタフェースを搭載しながら、単体動作するメガネサイズのデバイスに仕上げた。さながら、アニメ作品「電脳コイル」に登場する「電脳メガネ」のようだ。

ARグラス「Orion」

 Orionは、ビデオパススルーではなく物理的な視界に映像を重ねられるARグラスで、同社CEOのマーク・ザッカーバーグ氏は、ホログラフィックARグラスと呼称する。100g以下の本体に、バッテリー、独自開発の超低電力プロセッサ、広視野角ディスプレイ、スピーカー、カメラ、アイトラッキングセンサーなど、ARグラスに必要なパーツを全て詰め込むことに成功。MetaのAIとも連携し、カメラでユーザーの視界を認識し、それに基づいたコミュニケーションを取ることも可能だ。

Orionのために開発された超小型かつ超低電力のパーツたち

 ディスプレイは、シリコンカーバイド製のレンズとuLEDを採用した超小型プロジェクターで投影するという新機軸のもので、どの環境下でも視認できる輝度と複数のウィンドウを同時に並べられる70度の視野角を確保。メガネのフチには7つのカメラとセンサーを内蔵し、AI/機械学習/グラフィックス処理の他、位置推定/マッピング(SLAM)を超低電力で実行できるカスタムシリコンも搭載している。

超小型プロジェクターで投影する

 デモ映像では、実世界の部屋に浮かんだ複数のウィンドウで、WebブラウザやMessenger、Instagramを見たり、Orionを掛けたもう一人と現実空間上で3Dゲーム「PONG」を楽しんだりする様子が映し出されていた。体験者のなかには、米NVIDIAのジェンスン・フアンCEOの姿もあった。

現実空間に浮かぶメニュー画面。ビデオパススルーではないため、背景の空間は実際に目で見えているものになる
いわゆる既存のARグラスと異なり、複数の画面を同時に表示できる視野角を持つ
Orionを掛けた2人がPONGで遊ぶ様子
Orionを試す米NVIDIAのジェンスン・フアンCEO

 操作は、音声入力、視線トラッキング、ハンドトラッキングの他、EMG(筋電図)をシームレスに組み合わせることで、スワイプ、クリック、スクロールを簡単に行えるという。EMGはリストバンドとして手首につけることで筋肉の動きによって生じる電気信号を感知し、街中など、声を出しづらかったり大振りなジェスチャーができなかったりする状況下でも、手首のわずかな動きだけで操作できるようになるとしている。

筋電図を取得できるEMGリストバンドを開発
僅かな手の動きだけでOrionの操作が可能

 ザッカーバーグ氏は、Orionを「フルスクリーンのホログラフィックARメガネだけではなく、ニューラルインタフェースを試せるARメガネ」として、EMGを使ったインタフェースもアピールした。

Orionを身につけるザッカーバーグCEO

 一方で「消費者向けの製品として出荷するにはまだやらないといけないことがある」(ザッカーバーグ氏)としており、ディスプレイのチューニングやデザインに改善の余地があるとしている。OrionはデモキットとしてソフトウェアやAR体験の発展に使い、将来的には「最初のコンシューマ向けのフルホログラフィックARグラスにしたい」と述べている。

 そのため、現時点で一般販売の予定はなく「Orionはタイムマシンとしてみてほしい。エキサイティングな未来を見せるもの」(ザッカーバーグ氏)と語った。

Orionの元になる10年間のプロトタイプの姿も

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