横浜国立大学などの研究グループは9月25日、男性不妊治療に必要な精子の評価作業を人工知能(AI)で支援する精子評価システムを開発したと発表した。
精子の総合的な特徴と動きの情報を同時に学習するアルゴリズムを開発。クラウドに接続せず、院内のPCでリアルタイムに精子のグレードを評価でき、不妊治療の受精率の向上などに貢献できるとしている。
男性不妊の治療の中でも、精子数の少ない患者に主に行われる顕微受精は、限られた時間の中で有望な精子を見つけ出す細胞識別能力が要求され、胚培養士の負担は高い。成功率を上げるためにも精子の探索・評価を支援する技術が求められている。
研究グループ2021年、クラウドの計算資源を利用した大規模な精子データの収集とディープラーニングによる学習を実現したが、顕微鏡の映像をクラウド経由でリアルタイムに評価することは難しかった。また、病院内のデータをクラウドで扱うことにはリスクがあった。
今回の研究では、これまで開発してきたシステムを基に、高精度化とリアルタイム化を図り、病院内のPCで高速に動作するシステムを実現した。
顕微鏡下で撮影された615本の動画に含まれる精子領域すべてに対し、40人の胚培養士がのべ2万4533ケースを評価した精子グレード分布データセットを作成。精子の形状の特徴とその関係性を抽出する学習アルゴリズムを開発し、その特徴抽出器と損失関数を評価した上で、動き情報を追加して精度を向上させた。
また、パラメータサイズを軽量化し、カメラからの映像をリアルタイム・高精度に追尾処理できるようにした。
その結果、従来のシステムより精度・速度の両面で上回ることができたという。システムの実用化により、男性不妊治療における受精率の向上や患者の費用負担軽減、胚培養士の負担軽減などが期待できるとしている。
研究成果の一部は、2024年8月23日に「IEEE Access」に公開された。
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