老舗バッグメーカーはなぜ“服”を作った？ 「着るバッグ」をめぐるエースの挑戦：分かりにくいけれど面白いモノたち（4/6 ページ）

[納富廉邦，ITmedia]

　「エア・ベンチレーショ・ファスナーなんです」と広報の森川さん。「あと、ジャケットのポケットなどにコートを着たままでもアクセスできるようにということも考えました」と開発の生本さん。

　なるほど、冬場に電車の中などで、コートを脱ぐのは面倒だけど、ちょっと熱がこもることがある。そういう時に、コートの中に風を通せるのは助かるかもしれない。下に着ているジャケットなどのポケットへのアクセスというのも納得だ。夏場に背中の風通しが良いビジネスリュックなどを作っているエースならではの配慮だ。

UNTRACK「Essential Jacket / VT （Setup）」4万4000円。上下のセットアップで販売。メンズ仕様のみ。色はブラックとネイビー、サイズはMとL。今回、詳しくは取り上げなかったが、パンツもしっかりポケットを多数用意している

　UNTRACKのウェアは、コート以外のアイテムも充実している。シリーズ内で一番売れているのが、ジャケットとパンツのセットアップなのだそうだ。このジャケットも、コート同様に4つの内ポケットを内蔵しているのだけど、丈が短い分、下部のポケットは、上開きでファスナーではなくスナップボタンで留めるタイプになっている。

ジャケットでは、下側の内ポケットは、開口部が上にあるタイプになっている。写真はクラシカルなムードのコーデュロイ生地を使った「Essential Jacket / Corduroy (Setup)」（4万1800円）のもの

　オンにもオフにも使えるバッグに合わせる服という提案のシリーズで、セットアップが一番売れるというのは、狙いが当たっているということでもあるのだろう。ただ、そのジャケットも、無難なものを作るのではなく、デザインこそイギリスなどの伝統的な形を元にしているものの、生地にコーデュロイを使ったり、UNTRACKのバッグにも使われているベンタイルを使ったりと、素材的には中々攻めている。また、ジャケットの内ポケットに縦開きでファスナー付きというのも、相当珍しいだろう。

コートやジャケットのポケットの内側はパイル地になっていて、入れたものを優しく保護する。写真は「Essential Balcollar Coat」のもの

　「ファスナーは、多分、開けっ放しで使っている人も多いとは思うんです。それでも全然いいんですけど、バッグ・メーカーとしては、付けてしまいがちというのはあるかもしれません。あと、ポケットの内側は柔らかいパイル地になっているんです。これも、エースのバッグでよくやるんですけど、中にいれたスマホなどに傷が付きにくいようにという配慮です」と生本さん。