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GoPro「凋落」の理由、華々しいスタートアップの紆余曲折を振り返る 大きな分岐点は8年前に小寺信良のIT大作戦(3/5 ページ)

» 2024年10月02日 12時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

運命の2016年

 16年は、多くのことがいっぺんに起こった年である。1月にはHERO4 Sessionの失敗を受けて、GoProは初めてのリストラで15%の従業員を解雇している。他に柱となる事業がないので、1つコケると被害が大きいのがベンチャーの弱いところだ。

 ソニーは6月に4Kのハイグレードモデル「FDR-X3000」をリリース、ハンディカムで光学レンズを動かして手ブレ補正をするという「空間光学手ブレ補正」をアクションカムに持ち込んだ。電子補正しかない小型カメラの世界に、4Kなど解像度に関係なく手ブレ補正が効くという、技術力でぶん殴ったようなカメラである。ようやく一矢報いたといったところであった。

17年のCESで出展された「FDR-X3000」

 一方GoProは、同年10月「HERO5 Black」をリリース、ここで初めてボディーが今のようなブラックとなった。また本体のみで防塵防滴仕様となり、そこはソニーを後追いした格好だ。4Kも撮影できたが、4Kでは手ブレ補正が効かないという点で「FDR-X3000」に勝てなかった。同時に小型モデルの「HERO5 Session」も出ているが、それよりもデカい製品が出た。

 空撮用ドローン、「GoPro Karma」だ。カメラは別売で、GoProを前方に搭載する。カメラだけではない、別の柱を作ろうというわけである。ところがこのドローンが、1カ月程度でリコールとなった。バッテリー部のカバーの設計が悪く、飛行中にバッテリーの接触が途絶えて墜落するという問題が発覚したのである。

17年のCESで展示された「GoPro Karma」

 鳴り物入りの新ジャンルが1カ月で失敗したことで、GoProは大きなダメージを負った。16年11月には200人規模でリストラを行い、年明け3月にもおよそ17%の従業員をリストラした。

 頼みのHERO5 Blackは、悪い製品ではなかったが、16年には同様のスペックで中国の有象無象のメーカーが続々とGoProクローンを投入し、市場は荒れた。同年、くしくも後に競合となるInsta360が、初の製品「Insta360 Nano」をリリースしている。iPhoneと合体して使用するカメラである。

 ドローンは、その後も事業の継続を模索したようだ。だが結果的には18年1月にドローン事業から撤退を表明し、CEOのニック・ウッドマン氏からは、カメラ事業継続のためには買収もあり得ることをにおわせる発言もあり、株価は急落した。

 17年に登場した「HERO6 Black」は、4K/60pまでの撮影を可能にした意欲作だった。また4K/30pまでなら手ブレ補正が効く。電子補正で4K処理するというのは、当時の画像処理エンジンとしては画期的な事だった。

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