ITmedia NEWS >

ガチャマシン開発者は「電源いらず」にこだわる? タカラトミーに聞いたカプセルトイ60年の歴史と矜持分かりにくいけれど面白いモノたち(3/5 ページ)

» 2024年10月31日 12時53分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 「お金を入れる場所は変わりましたけど、中でやっていることは同じなんです。コインの大きさと厚みで金額を判別して、必要な枚数が入れられるとロックが外れてダイヤルが回る仕組みは、ずっと変わりません。タカラトミーアーツ製のマシンは、コインの枚数を厚みで見てますけど、その長さで金額をカウントするマシンを採用しているメーカーさんもあります。そんな風に構造に違いはありますが、やっていることは同じですね」と福本さん。

 この仕組みのおかげで、ガチャマシンは電源がいらない。だから設置場所を選ばず、駄菓子屋の店先にも置けるし、駅のコンコースなどに大量に並べられるわけだ。また金額のカウントも厚みや長さを判別する部分を変えるだけなので、同じ機械で300円のものも400円のものも、その中身に応じて売ることができる。これらをデジタルどころか電動でさえなく、機械の機構だけで実現しているのがガチャマシンなのだ。

「ガチャ2 Ez」のハンドルの裏側にあたる部分。ギアとスプリングで作られているのが分かる。ハンドルを360度回すとカプセルが出てくるという仕様もずっと変わっていない

 実は、カプセルトイのマシンを作っているのは、大きくはタカラトミーアーツと、もう1つの2社しかない。そして、それぞれに機械のメカニズムは独自に考案しているそうだ。だから、それぞれに特許を取って独自性を守っている。気軽に回しているガチャマシンは、実は沢山の特許技術が詰まっているのだ。

2000年に発売されたユージン「ガチャ1」は、金庫を1カ所に集約し、偽コイン対策を施したモデル。この前年にカプセルプラレレールが登場して大ヒットとなっている

「スリムボーイの次に出たのが『ガチャ1』です。これが2000年で、ちょうど私が入社した年です。だから、実は私は入社してすぐに、このマシンの改良を担当したんです。その当時、同僚の先輩が開発したのが2005年の『ガチャ2』ですね」と福本さん。

偽コイン対策が必要に

 ガチャ1は、その頃、偽コインが出回り初めて、その被害が無視できない規模になってきたため、その対策機構を盛り込んだマシンとして開発したのだそうだ。コインが通る場所は、それまでサイズを見て、それより小さいものは下に落ち、大きいものは通り道に入らずにやっぱり下に落ちる仕組みだったが、そこに金属の質が分かる精度の高い機械を入れた。これもセンサーなどは使わず、機械式のものを採用したという。

 ガチャ1は、そのセレクターを搭載するためのマシンだったこともあって、マシンとしては、「スリムボーイ」から、ほとんど変わっていなかった。

「急いで出したので、半完成品みたいなマシンだったんです。それで、スリムボーイ以来、オペレーターさんやユーザーさんからのフィードバックがたまっていて、自分たちでも改善したいと思っていた部分を採用して開発したものがガチャ2です」と福本さん。

2005年に発売された、ユージン「ガチャ2」には、福本さんが提案した空打ち対策の機構が搭載された。100〜500円までの対応

 スリムボーイでは、100円から400円まで対応する機構を内蔵していたけれど、ガチャ1からは500円まで対応できるようにした。ただ、その機構がトラブルが多く、そのトラブルに対応できる人材として、アミューズメント・マシンの業界でゲーム機を作っていた藤本さんが入社したそうだ。

 「それで、入社前から気になっていて、転職の時から提案していた『空打ち問題』にも取り組みました。実は、ガチャ1までのマシンでは、中のカプセルがなくなってしまっても、お金を入れたらダイヤルが回せてしまうんです」と福本さん。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

あなたにおすすめの記事PR