沖縄科学技術大学院大学(OIST)は12月13日、画像の「くっきりさ」を定量的に評価する新手法を開発したと発表した。画像をぼかしても視覚要素をどれだけ保持できるか測定し、画像の鮮明さを「鮮明度」として高校数学を用いて数値化した。なお、論文の筆頭著者であるサント・チャン博士はVTuber・さくらみこさんのファンで、今回の研究にも題材として活用している。
研究チームは、鮮明さの定義について「ぼかしに対する抵抗力」と定義。鮮明度は、画像の構造がどの程度のぼかしに耐えながら元画像との類似性を保っていられるかを示すとしている。
今回の手法では、画像中の隣り合うピクセルをランダムに入れ替えることで画像をぼかした後、元画像と比較する事で、構造がどれだけ類似しているかを測定。色のコントラストが高く、元の構造が多く残る画像には高い値を、単色か識別不能になった画像には0と割り当てた。
鮮明度の測定手法は画像の色彩を保ち、圧縮した画像にも機能する他、各種画像分析や物理現象における構造変化の検出にも役立つという。「この研究成果によって、美術研究者たちがさまざまな構図を試行し、発見を客観的かつ定量的に共有できるようになると期待する」(チャン博士)
画質と安定性の測定 (A)オリジナル作品:いかだに乗った姫森ルーナとルーナイト(ホロライブプロダクション)のピクセルアート (B)65万回のピクセル反転後のぼやけたバージョン 作品の構造は劣化するが、いかだの形状は依然として確認できる (C)色差マップ:構造の安定性を示すグレースケール画像 黒い部分は安定しており、白い部分は安定していない (D)劣化スコア:ピクセルの反転による作品の構造の変化を、完全にシャッフルしたバージョンと比較して示す (Dの挿入図)色分布:作品で最も頻繁に使用されている50色の3D散布図で、赤、緑、青の色空間における分布を示す (E)構造安定性: 構造安定性を測定する基準(ΔS)を定義し、ピクセル反転数が画像サイズとほぼ等しいときに構造安定性が最大になることを示す今回の研究について、チャン博士(絵描きとしても活動中)は「この発想は、絵文字を描いているときに思い付いた。実験物理学者として、作品の鮮明さ、バランス、調和など芸術的性質を定量的に評価できる手法を開発できればと思った」と説明している。
また、今回の成果が商業案件でも機能するかを検証するため、自身がファンであるVTuber・さくらみこさんを題材に、Steam用ゲーム「Holo X Break」の絵文字を設計。鮮明度の測定に活用した。
「自分は『35P(みこぴー)』と呼ばれる、彼女のファンの1人。以前、35Pの仲間たちと一緒に、米ニューヨークのタイムズスクエアで彼女の活動5周年を祝うために広告掲示板を借り、アニメーションを作製、展示する機会があった。このような『推し事』への情熱を『お仕事』に注いだ結果、今回の論文が生まれた」(チャン博士)
この研究成果は、学術誌「米国科学アカデミー紀要」に同日付で掲載された。
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