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「文学フリマ」の盛況を支える“KDP出版”とは? リスクを抑えながら自費出版する仕組みと楽しみ分かりにくいけれど面白いモノたち(6/7 ページ)

» 2024年12月21日 13時14分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 SNSも、重要な宣伝ツールになる。多分、WebカタログやSNSがなかったら、筆者のような無名のブースには、通りすがりの方か、友人知人以外は来てもらえなかったと思う。

 本を作る過程でのデジタル化と、本を売る過程でのインターネットという、デジタルのツールが揃ったところに、「文学フリマ」という、コミケほどには大規模ではない、その分、参加しやすい本作りのお祭りがあったというのが現在なのだろう。

 SNSでいえば、今回筆者は「Books and Bites 本を読んだら食べたくなって」という本を作ったのだけど、その中に「アップルパイにはチーズがなければならない」といったことがアメリカの小説に書かれていたという話を書いている。

 ただ、これがどの小説で読んだのか思い出せず、いくつかの小説に同じような文章で出てきたことだけは覚えていたので、そのことをSNSに投稿した。すると、すぐに答えが見つかり、さらに面白い付属情報まで出てきたので、それをまた投稿したら、ちょっとバズった。

 なので、こういう話が入った本を文学フリマで売りますという投稿をしたら、「あのアップルパイの話が入った本ですよね」と言って、買っていってくれた方が数名いたのだ。そんなこともあるのが、今の自主出版事情だったりする。

 SNSで話題になった本をAmazonで探すのも、文学フリマで見つけるのも、スマホの操作自体はほとんど同じで、あとは、自分のアンテナをどこに伸ばすかという問題で、本屋には売っていない本にも面白い本が沢山あるらしいというのも、ネットの普及が生んだ新しいマーケットだ。

筆者が、自主出版した本や、そのPDFファイルを販売しているBOOTHのサイト。簡単に自分のショップを持てるのは、本を売りたい個人にとって、とても助かるし、もしイベントで売れなくても、他で売る機会があると思えることで、本を作りやすくなる

 さらに、文学フリマ前後に、自分の本を売るためのサービスが充実してきたのも、本を作るというハードルをかなり下げている。筆者も、DMによる直販以外に「BOOTH」と「BASE」の通販サービスを利用している。特に、PDFファイルを販売できるBOOTHは、自主出版をするものにとって、とてもありがたい。

 昔風に言うところの版下は、PDFで作るのだから、少しの変更で、紙の本をデジタル化したのと同じPDF版の本は簡単に作れる。紙ではコスト的に難しいため白黒写真を掲載しているページをカラー写真に差し替えることもできる。そうやって、付加価値を付けつつ、PDFファイルを紙より少し安価で販売することで、本のプロモーションにもなるし、筆者のような老眼の人にも本を届けることができるわけだ。

 しかも、紙の本と同じレイアウト、書体で読んでもらえる。モノとしての紙の本に価値を持たせたい自主出版のレーベル的には、プラットフォームやリーダーを選ぶ、フロー型の電子書籍よりもPDFで読んで貰う方が紙の本との一貫性がある。

 本を印刷する前に、PDF版を買ってもらえると、採算が早く取れることにつながるし、どれくらい読者がいるのかの事前調査にもなる。文学フリマ以降は、在庫を引き続き販売できるというのもメリットだ。文学フリマで買ってくれた人が、SNSに感想を上げてくれることで、通販が動くことは当たり前にある。ありがたい話だ。

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