筆者も、タイトルを決めたり、英語タイトルやサブタイトルなどは、AIと相談しながら決めることが多い。出版社では、本のタイトルというのは、結構、編集者や営業が決めることも多く、それはそれで一理あると筆者は思っている。著者の思い入れだけで作られた本は、商品として弱い。他社の視線が入った方が、面白いものができる可能性は高いと思うのだ。そこで、第三者としてAIに頼ったりしている。
ただ、時代が変わっても、結局人力が便りなのは文字の校正だ。どれだけ読み直しても、誤字脱字は見つかるのが本という存在。だから、もし時間があるのなら、全部できあがったあと、KDP出版の「校正刷り」サービスを使って、実際に紙の本を読みながら校正を行うことをお勧めする。この実際に売るものと同じ体裁の本で校正ができるというのも、オンデマンド印刷の魅力の一つだろう。
KDP出版の使い方については、ヘルプページや、ネット上に沢山ある解説記事(筆者が書いたものもあります)を参考にしてほしいが、ここで言いたいのは、KDPで一度本を作って、PDF入稿を覚えれば、他の同人誌印刷屋さんやオンデマンド印刷を行っている印刷所など、他の印刷・製本サービスも、ほぼ同じ要領で使えるということ。むしろ、KDPのように完全に機械任せにするのではなく、人の目や手が入る分、巷の印刷サービスの方が使いやすい場合がある。
筆者が「菊月千種の夕暎」という本を文庫で作るために、「ちょ古っ都製本工房」さんで取った見積りの例。100冊を10日営業日コースの発注で作ると。諸経費込みで3万1790円。つまり1冊あたり約318円で作ることができる。KDPだと日数による割引などはないが、印刷屋さんだと、どこも入稿から納品まで長いほど安くなるまた、KDPのように、1冊から安価で作ることができるサービスは、1冊作っても100冊作っても1冊あたりのコストは変わらない。なので、文学フリマ用に2〜30冊作って、売り切ってしまおうというような場合はいいのだけど、100冊、200冊作るとなると、印刷屋さんのサービスの方が安上がりだったりする。ただし、その場合、200冊分とかを前払いすることになるので、初期コストはそれなりにかかる。
また、KDP出版は、元々アメリカのサービスなので、選べる判型が日本のサイズとは微妙に違う。その微妙な違いがカッコよくて、筆者はKDPの新書サイズに近いけど、ちょっと幅が広い判型を使っている。でも、例えば文庫本を作りたいといった時、KDPには文庫サイズの選択肢がないのだ。
筆者が12月の文学フリマ用に作った「菊月千種の夕暎」という本は、文庫サイズで出したかったのと、他の印刷屋を使ってみたかったことから、京都の「ちょ古っ都製本工房」を使ってみた。こうやって、遠方の印刷屋さんが使えるのも、オンライン入稿あってのこと。
本を作る一方で、家のプリンターを使って、12ページの販促用小冊子も作成した。作る手順は本作りと同じだが、A4用紙3枚を両面印刷して二つ折りするだけの冊子なので、プリンターで十分なのだ。内容は、昔仕事で作った9ページのグラビアの縮刷版に3ページの本の宣伝を入れたもの文学フリマで色んな本を買って、奥付を見ると、印刷・製本をどこで行ったかが書かれている場合がある。気に入った製本だったりすると、その印刷所を検索して、使うかどうかを検討するというのも、本作りの楽しさの一つなのだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR