単に取り出しやすいというだけなら、従来の長財布などに付いている、段々になった収納でも十分に選びやすく、出し入れも不便ではない。私が使ってみた、従来のカードケースとの決定的な違いは、このケースが、店舗や病院などで出し入れする必要があるカードの収納に特化していて、名刺入れとしての機能は一切考慮されていないということだった。
考えてみれば、名刺とカードは、それを出し入れするシチュエーションが全く違う。両方を一度に出す必要がある状況になることは、まずないだろう。サイズが同じだから、まとめて入れられるという合理的な判断は、しかし、実際に「使う」ことを考えると、あまり便利とはいえなくなるのだ。
一つ目の特徴として、このように、フラップ部分が大きく開いて、カードの上部が表も裏も完全に露出するという点が挙げられる。何気ない機能だが、これもこのカードケースの使い勝手に影響する重要な要素の一つになっている「クレジットカード、キャッシュカード、免許証などの物理的はカードは、持っていないと困ったり、面倒な手続きが必要になるシーンがまだまだあります。一方で、最近、名刺がなくても、以前より困るシーンが少なくなりました。なので、交換の機会があるのが分かっている場合のみ持ち歩くようにしています。余談ですが、最近、むやみに名刺を渡すのは控えていて、さらに名刺から住所も消し、名前、QRコード、メールアドレス、やっている事業のURLだけにしました。送るものがある時は、どこにお送りしたらいいかを別途確認するので、名刺に住所は必要ないと考えました。マレーシアでは、ビジネスの場でも名刺を渡す機会がなく、(米Metaのコミュニケーションアプリの)Whatsapp(のアカウント)をその場で交換します。日本は、なかなか名刺はなくならないですが、いつかなくなるんじゃないかと思います」と話す南さんだからこその、思い切った発想と言えるのではないだろうか。
名刺は入れないと決めてしまえば、あとの問題は、複数のカードから、いかにスムーズに必要なカードだけを取り出すかということに絞られる。それを、ケースから完全に取り出さずに、扇状にカードを開くというアイデアで解決しているのが、このカードケース最大のイノベーションだろう。名刺も入れるとなると、「選ぶ」に、ここまでフォーカスは当たらない。
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