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「シンプルなカードケース」は“キャッシュレス時代のお財布”になれるか?分かりにくいけれど面白いモノたち(4/5 ページ)

» 2025年01月29日 16時35分 公開
[納富廉邦ITmedia]

自分が使いたいものを作ってる

 「カードを選ぶ時に、単にカードを差し込むだけのケースの場合、カード全体をスライドさせる必要があります。一方で、扇形なら下の部分は動かさず、そこを支点のようにして、上の部分だけを親指を人差し指でスライドさせます」と、実際の使い方を解説する南さん。この使い勝手の部分にこそ、ミニマムな発想がある。シンプルであること、ミニマムであることは、実用品の場合、形状の話ではないのだ。そこは、南さんがプロのプロダクトデザイナーではないからこそ可能な発想なのかもしれない。

 随分昔、「薄い財布」を発売したばかりの南さんにインタビューした際に、「とにかく自分が使いたいものを作ってるだけなんです」と笑っていたのを思い出す。その姿勢が変わらないからこそ、機能やデザインよりも「使い方」を考えた製品作りができるのだろう。

フラップ裏には、四つ折りの紙幣が入る程度の小さなポケットが用意されている

 「シンプルなカードケース」のフラップ部分には内側に小さなポケットが付いている。これも、あったら便利だけど、別になくても構わないし、「シンプル」にこだわるなら、ない方が潔いといえるかもしれない。でも、これを付けるのが、南さんのサービス精神なのだろう。南さんは、ここにエアタグを入れているという。

 「日本では、まだまだ現金を使うことが多いですが、例えばマレーシアでは、少額決済のPayPayのようなアプリ『Touchn Go』がほぼどこの店舗でも使えます。屋台などでも、店頭にある紙のQRコードを『Touchn Go』で読み取るだけで、支払いが済みますから、マレーシアでは現金を使うシーンはほとんどありません。新しい実験として、実は最近、近所に出かける際は、もしものための高額紙幣一枚だけ入れ、このカードケースだけで出掛けるようになりました。私の場合、普段持ち歩くカードも少ないので、ふたの部分には、エアタグと高額紙幣1枚を入れています。エアタグが滑り落ちるのを防止するために、小さく切った両面テープを貼り付けて、滑り止めにしています。私みたいな使い方ではなくても、いざというときの1万円札や、エアタグは、役に立つことがあると思い、ポケットをつけました」という南さんも、日本では財布を持ち歩いている。

 「残念ながら日本では、ランチでカードが使えなかったり、地方のタクシーの支払いは現金のみだったり、まだまだ現金がないと困るシーンがありますので、薄い財布や小さい財布を使っています。お店側がカード会社に支払う、カード手数料が海外に比べて高いのが、問題だと考えています」と南さん。

 実際、財布はお金だけではなく、外出時に意外に受け取る機会の多いレシートなどの小さな紙片の収納場所として、ギターピックなどの意味もなく携帯したい小さなもののためなど、案外、まだないと困る存在。また、この「シンプルなカードケース」は、その機能上、カード以外のものは、フラップ裏のポケット以外には入れにくい(入れると、カード選びの機能が低下してしまう)。

最近の私の場合、ポケットにはクレジットカードを入れた財布(Syrinx「Hitoe Fold Less」)、バッグにこの「abrAsus シンプルなカードケース」と名刺入れ(rethink「Narrow Sleeve」)と、3つを常に携帯して、使うシチュエーション別に使い分けている。ただ、財布は、研究もあって色々使い比べているので、頻繁に変わる

 私は、カードケースには普段使いのクレジットカードは入れず、それらは財布に入れて持ち歩いているが、支払いに使う以外の、例えば病院の診察券と保険証、マイナンバーカードなどをまとめて、このカードケースに入れておくと、ものすごく便利だということに気がついた。病院内では、とにかく、診察券を出し入れする機会が多く、また、保険証やマイナンバーカードもスムーズに出せると、ストレスがとても少なくなる。

 そして、支払い関係は財布に集約させておく。全てをひとまとめにするより、シチュエーションと道具がはっきりつながっている方が、生活するにはとても楽なのだ。

 その意味でも、カードケースを、財布に入れるカードとは分けて持ち歩ける、カードの出し入れに特化したケースという割り切りは、とても素晴らしいと思う。

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