ITmedia NEWS > 社会とIT >

初実施の「情報I」、他教科より扱いが“軽い“現状にもの申す 各問題の意味することとは?小寺信良のIT大作戦(1/3 ページ)

» 2025年02月17日 15時30分 公開
[小寺信良ITmedia]

 1月18日と19日、全国で大学入学共通テストが実施された。国公立大学を一般入試で受験する生徒には毎年恒例の試験ではあるが、2025年は新たに必修教科として「情報」が追加された。

 現役高校生に対しては、2022年度より実施された学習指導要領に基づいた「情報I」より出題、浪人生に対しては旧学習指導要領に準じた「旧情報」が実施された。つまり現役生と浪人生で、問題が違うわけである。独立行政法人大学入試センターが公開した実施結果の概要によれば、「情報I」の平均点は69.26、「旧情報」は72.82。若干旧情報のほうが点が取りやすかったようだ。

 とはいえ注目は、新学習要領に準じた「情報I」の試験内容である。必修教科なので、普通科なら理系も文系も同じ内容を学習する。高校普通科はまだ専門教育ではないが、一般に大学進学が前提となるので、大学側ではこの試験で学習に付いていけるかを見る、ということになる。

 読者の中にはIT系の仕事をしている人は多いと思うので、情報Iの問題が解ける人も相当いらっしゃるだろう。現役社会人の視点から見て、この試験問題の意味するところを考えてみたい。

第1問:基礎的な能力を問う問題

 2024年度の「情報I」の試験問題は、すでに新聞各社から問題文と解答が公開されている。本文では、問題文の概要のみを示す。興味のある方は、実際に問題文を参照しながらお読みいただければと思う。

 第1問は配点20点で、短い文章問題のほか、技術的な基礎力を問う問題であったようだ。

 問2では7セグメントLEDを使って表現できる文字や数字、記号数の合計を求めたり、表現できるアルファベットや数字から、5000種類のエラーコードを表現するにはこのLEDが何個必要かを問う問題であった。

 7セグメントLED、ドットを入れて8セグメントのものもあるが、現在こうしたデバイスで何かを表すみたいなことはあまり行われず、ちゃんとメッセージが出せる小型ディスプレイを使うのが一般的だろう。まあ自分で基板引いて何かの回路を作る時に安いから利用することはあるかもしれないが。

 実質的にはこれは、順列・組み合わせ問題である。数学が得意な子なら、情報の知識と関係なく解けるだろう。一方で文系の子には難しかったかもしれない。こうした数学的知識が、実際の仕事や作業と結び付けて考えさせた点では、自然現象を数学で解かせる物理の問題のようなアプローチであるように思える。

 問4はUI設計の原則を問う問題だった。これは図版を見ていただいたいが、現在のマウスカーソルの位置からもっとも短い時間で指し示すことができるのはどれか、という問題だ。

令和7年度大学入学共通テスト「情報I」第1問 問4より

 問題文に、「ディスプレイの端にある対象物は実質的に大きさが無限大になる」とあることから、(2)が正解とされている。つまりマウスカーソルは、画面の端に到達するとそこで止まるので、マウスをエイヤッと右上に投げればそこで止まる、なので距離的に(3)より近い(2)が早い、というわけだ。

 ただ、問題文がいささか不親切であるように思える。「指し示す」とは何かの定義が曖昧だからだ。指し示すとは、一般的には自分以外の第三者に対して指して示す事だろう。自分自身に指し示す意味はないからだ。そうであれば、マウスカーソルの矢印全体が表示されていなければ、人は指し示しているものが分からないはずだ。(2)や(3)のような角にマウスカーソルを持っていくと、矢印の本体部分は画面の外に出て、消えてしまう。先端のドットがちょこっと残るだけだ。これを「指し示す」と言うのか。

 そのエリアがクリックボタンであり、どれが一番早くクリックできるのかを問うのであれば(2)だが、矢印を以て指し示せというのであれば、面積の広い(1)も候補に上がってくる。まあ距離だけに着目すれば(2)が一番近いので、問題文が曖昧でも正解できた子は多いとは思うが、人間に対するUIを問うのであれば、人になにをさせたいのか、問題文の表現には厳密さが求められる。

       1|2|3 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

あなたにおすすめの記事PR