第4問は、観光庁が公開している消費者動向調査のデータを見ながら、旅行に関する実態を分析するという問題である。配点は25点。問題としては「Uさん」が行った分析を記した文章の穴埋めとなっている。また元データを変換してさまざまなグラフや分布図を作成しており、いわゆるビッグデータの扱いのプロセスを示したものとも言える。
ここで主体となるのは、グラフ化されたデータが意味するものを読み取れるか、というところである。この点では情報教育の割と古いところからの出題とも言える。穴埋めなので、自分で結論を導き出すのではなく、この結論になるのはなぜか、を問う格好にはなっているが、本来ならば自分で結論を導き出すことが求められるのだろう。その点では、国語力も求められる問題とも言える。
相関に関しては、「何が言えるのか」にフォーカスが当たっているが、「何が言えないか」についても問う問題があっても良かっただろう。実社会では、データを根拠とする議論で、そうとはいえない傾向を持ち出して無駄な遠回りするケースも少なくない。「何が言えないか」を探すことも重要視したい。
また具体的な都道府県名はA〜Fの記号になっているが、これは具体的な都道府県名を表示しても良かったように思う。都道府県の思い込みのイメージに対して、データによる分析の不一致が感じられることも、エビデンスベースで考えることの醍醐味であろう。
今回が第1回目となる試験だったわけだが、どのような問題で、何を測るのか、いろいろ議論があったところだろう。知識を問う問題もそこそこあったが、知ってるだけではどうにもならないという問題も多かった印象だ。一説にはサービスの作り手側に立ってほしいという願いも感じさせるという意見もあるが、個人的にはそこまででもなかったように思う。むしろこれぐらいは普通考えておくべきだろうという、良識ある社会人の水準を示したように思える。
河合塾では、国公立大学において情報Iの配点状況をまとめた資料を公開している。これによれば、情報Iの配点比が低い大学が全体の70%を占めている。これは例えば国英数が100点満点の素点、例えば80点をそのまま採用するのに対し、情報Iは同じ80点でも、40点ぐらいしか加点にならない状況もあるということだ。
これでは学生達も勉強に身が入らない。必修にはなったが、実際に授業があるのは1年生のときだけで、3年生のときに受験対策でちょろっと復習する程度というのが実態だ。
これは非常にもったいない。情報は他の教科よりも面白さ・興味深さが演出できる教科である。数学や国語力を問う設問も可能で、ある意味総合力が試される。
まだ1回目の試験であり、大学側もこれで何が分かるのか様子見のところもあっただろう。だが問題としてはまずまず良問であり、他の教科に比べても平均点が高い。つまり子供達には理解しやすい教科とも言える。
大学側も、AIや情報工学の分野を強化するところが増えている。その基礎力とも言える情報Iの重要性は、理解されているだろう。計算問題が出ると文系には不利なところだが、そのあたりは大学側の配点比重で調整してもらうとして、全体的に配点を上げることが、社会の底上げにつながるのではないだろうか。
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