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放送システムを「ソフトウェアベース」で作るには FOR-Aならではのアプローチと、“フルIP化”への懸念小寺信良の「プロフェッショナル×DX」(1/3 ページ)

» 2025年02月28日 09時00分 公開
[小寺信良ITmedia]

 FOR-Aこと朋栄は、放送機器の中ではメインのスイッチャーも作っているが、もともとは各種映像周辺機器に強いメーカーである。シグナルプロセッサ、コンバーター、キャラクタージェネレータ、ルーティングスイッチャーなど、放送に必要な周辺機器が何でもそろっている点では、システム内では一番柔軟な対応が求められるメーカーでもある。

 2020年のコロナ禍や働き方改革といった流れ、あるいは地方におけるハードウェア技術者不足により、テレビ局内のワークフローは大きく変える必要性が出てきた。FOR-Aでも過去10年来続くIPソリューションに対応すべく、ビデオサーバなども製品化しているが、ここ2〜3年で急速にハードとソフト両対応を進めている。

 そうしたFOR-AのDNAというか、これまでの知見の集大成のような製品が、「FOR-A IMPULSE」である。24年のInter BEEではそのUIも含めて初めてプラットフォームが披露され、注目を集めた。

 FOR-A IMPULSEでは、FOR-Aが得意とする周辺機器は全てソフトウェア化された「ノード」という形で組み込まれている。スイッチャーでさえノードの一部だ。そしてそれらのノードを、UIであるGraphEditor上で「配線」していき、ライブ中継・配信等に最適化された放送システムを作り上げる。こうして作られたシステムは、「パイプライン」と呼ばれる。このパイプラインは複数制作することができ、さまざまな規模や機能のセットを、パイプラインの切り替えで使っていくというイメージだ。

ノードをつないでシステムを構築していく

 従来のSDI型ライブ放送では、その規模に応じてサブを用意し、スイッチャーを中心に入出力の接続、周辺機器が足りなければ別の部屋や機材庫から持って来てケーブル配線やパッチベイ対応するなど、事前準備に大変な手間と労力がかかっていた。もちろんそれには人手も必要だし、システムを組み上げる知識を持った人が少なくとも1人はセットアップを指揮する必要がある。

 こうしたシステム構築は、あらかじめ配線図を紙で作っておき、それを実機上に移していくといった方法が取られる。規模が大きくなるほど、実際にどの信号がどこの何番にきているのかといった対応表がなければ、手が付けられないからだ。

 さらに言えば、周辺機器は必要になるかもしれない最大限の台数を保有しておかなければならず、中には1年も2年も使われないという機材も出てきていた。

 一方FOR-A IMPULSEでは、各機材はIN/OUTがあるノードになっており、それらの配線は全てGraphEditor上でつないでいくだけである。ノードの接点にマウスオーバーすると、そこに来ている映像がサムネイルで表示される。実際に何が来ているのか確認しながら配線できるので、頭の中で考えているシステムイメージを表出させるツールとしても使える事になる。

ノードの接点にマウスオーバーすると、そこに来ている映像がサムネイルで表示される
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