それら固定ブロードバンドの弱点を回避して自宅にWi-Fi環境を整備できることから、根強い人気を獲得しているのがいわゆる「ホームルーター」だ。これはスマートフォンと同じモバイル回線を固定ブロードバンドのように扱うサービスで、海外では「FWA」(Fixed Wireless Access)と呼ばれ光回線の敷設が難しい地域などでよく利用されている。
ホームルーターの最大のメリットは何と言っても手軽さだ。モバイル回線を用いるのでケーブル敷設が必要なく、サービスを契約して専用の機器を自宅に設置し、電源をコンセントに挿すだけでWi-Fiが利用できる。工事の手間はもちろんのこと、スマートフォンで通信ができるなら建物による制約もほぼないといっていいだろう。
また最近では、モバイル通信が「5G」に進化したこともあって通信速度がより高速になっており、理論値であれば最大で2〜4Gbpsもの高速通信を実現している。実測値でもダウンロードであれば100Mbpsを超えることも多く、動画配信サービスの映像を高画質で視聴する、といった用途であれば十分対応可能だ。料金も割引なしで月額5000円前後と、割引なしで月額6000円前後からのものが多い固定ブロードバンドサービスと大きな差はないようだ。
一方でデメリットとなるのが、無線通信ゆえに周辺の環境に通信速度が大きく左右されること。自宅周辺が「サブ6」と呼ばれる5Gの高速通信が可能な周波数帯の電波で整備されていれば高速通信が可能だが、4G、あるいは4Gから転用した周波数帯の電波で5Gを整備した「なんちゃって5G」とも呼ばれるエリアでは、高速通信はあまり期待できない。
自宅周辺の整備状況は各社のエリアマップで事前に確認できるが、必ずしもエリアマップ通りに整備されているとは限らない。また通信速度はホームルーターの設置場所によっても大きく変わってくるため、少しでも高速に通信がしたいのであれば自宅内のさまざまな場所で速度を試し、最も高速通信できる場所に設置する必要がある。
実際に設置してみないと高速通信できるかどうか分からない点が、ホームルーターの最大の弱点となるだけに、ホームルーターに関しては電波状況が悪い場合は8日以内に手続きを踏むことで解約し、端末も返却できる「8日間キャンセル」のルールが整備されている。ただ「UQ WiMAX」を提供するUQコミュニケーションズはその対象外で、8日以内の解約はできても端末は返却できないなど、サービスによって違いがあることから、後からトラブルにならないよう契約時の条件に十分注意したい。
加えてモバイル通信は、基本的にダウンロードの通信速度を高速にするよう設計がなされているため、ホームルーターはアップロードに弱い。先にも触れたが、アップロードを重視するならやはり固定ブロードバンドを選ぶべきだ。
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