このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。通常は新規性の高い科学論文を解説しているが、ここでは番外編として“ちょっと昔”に発表された個性的な科学論文を取り上げる。
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米UCバークレーに所属する研究者らが2013年に発表した論文「Spiderweb deformation induced by electrostatically charged insects」は、静電気を帯びた昆虫によるクモの巣の変形に関する研究報告である。
研究チームは、実験室条件下で静電気を帯びたミツバチ、アオバエ、ショウジョウバエ、アブラムシ、さらには水滴がジョロウグモの巣の近くを落下する状況を検証。落下時に絹糸の急速な変形を引き起こし、物理的接触の可能性を高め、結果として獲物捕獲の確率を向上させることを実証した。
帯電した昆虫や水滴が接地されたクモの巣に向かって落下する様子をビデオ撮影したところ、放射状の糸と特にらせん状の絹糸が帯電体に素早く引き寄せられる様子を確認できた。一方、帯電していない昆虫や水滴を用いた対照実験ではこのような変形は観察されなかった。
静止位置からのらせん状絹糸の最大変形量は、テスト対象のサイズに応じて約1〜2mmの範囲で変動した。このような動きの際の糸の平均速度は約0.7〜1.9m/sであった。落下する水滴に接触したらせん状絹糸がその正電荷を獲得し、その後別の水滴が近くに落下すると電気的反発が生じることも観察できた。
実験で使用した各昆虫種(ミツバチ、アオバエ、ショウジョウバエ、アブラムシ)および水滴のサイズによる巣の変形の程度には有意差は見られなかった。しかし、大きな水滴の電圧は小さな水滴よりも有意に高かった。
昆虫は帯電した表面を歩いたり、帯電粒子を含む気流中を飛行したりすることで容易に静電気を帯びる。冬季のミツバチは最大537ピコクーロン(pC)の正電荷を帯びることができ、非冬季でも最大200pCに達することがある。これらの値は実験で使用した値と同程度である。
Source and Image Credits: Ortega-Jimenez, V., Dudley, R. Spiderweb deformation induced by electrostatically charged insects. Sci Rep 3, 2108(2013). https://doi.org/10.1038/srep02108
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