「最初は、このばねでということでもなく、何か別事業を始められないかということだったんです。とは言っても、この平らな板を曲げて波をつけるという技術しなかったので、あくまでもこのばねで何かできないかということを探しいたところ、当時ヨーロッパのメーカーの折りたたみ自転車が流行っていたので、そのサスペンションを作ったりしました。サスペンションには樹脂が使われていて、結構頻繁に交換が必要だったんです。ばねだけだと支え切れなくて、樹脂が使われていたんですね。これはウチのばねなら樹脂なしでもイケそうと思って作ってみたら、いい感じのものが出来たので、Facebookなんかで『こういうの作りました』とか発信したら反応が良くて、商品化したんです。これは今も販売しています」と斉藤さん。
ただ、これは本来のばねの性能を生かせるマーケットが別にあったというだけで、ばねをばねとして使った製品をコンシューマー向けに出したというだけだ。このばねを使ったキーリングが面白いと思ったのは、これが、ばねとしての機能とは全然違う部分を使った製品だからなのだが、その発想の転換は、この段階では出てきていない。
「なんとなく、事業が形になっていったので、さらにできることはないかと思っていて、考えついたのがカードホルダー的な製品でした。径が大きめの2巻きくらいのばねを曲げて、そこにポストカードなどを差し込んで立てるといった感じのものです。それを作って美術館とかに飛び込みで営業していたら、東京都美術館が興味を持ってくださって、置いてもらいました。あとホテルのお土産屋さんなんかも置いてくれたんですけど、販路は狭いし、分かりにくいしであまり売れず、今は作っていません。その後、巻き数を増やして、車のダッシュボードにつけられるようにしたものを作ったんです。駐車券とか挟むような用途のものです。これがテレビで取り上げられて、それを見ていたイエローハットの社長さんが、自分のところで製品化したいと言ってくれました」。これも、イエローハットのオリジナル製品として、現在も販売中だ。
現在、WAVECLIPSの製品として販売されているのは「スマートキーリング」と「マネークリップ」の2種類。どちらもコイルドウェーブスプリングの応用製品ではあるのだけれど、本来のばねとしての機能ではなく、簡単に開いてしまうという本来のばねとしては欠点になる部分をメリットとして使った製品になっているのが何とも面白い。
特にマネークリップは、簡単に大きく開くという点のみに注目して、本来ばねだった製品を、クリップとして使おうというアイデアだ。正にWAVE CLIPであり、ブランド名が、スプリングではなくクリップなのも、そういうことなのだろう。
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