映画の撮影は台本があり、決まったアングルや動きで何テイクも撮るので、レンズは単焦点のマニュアルレンズが多い。一方ライブではワンマンオペレーションが基本であり、レンズも高倍率ズームかつオート対応が求められる。それをシネマカメラでやろうというわけだから、レンズ側も対応が求められる。
放送用レンズではフジノンとキヤノンが2台巨頭なわけだが、フジノンでは大型センサー向けのPLマウント放送用レンズ「Duvoシリーズ」を立ち上げ、23年には早速ボックスレンズ「HZK25-1000」をリリースしている。光学40倍のスーパー35mm用レンズだが、内蔵エクスパンダーを使用するとフルサイズセンサーにも対応できる。
さらに同年ポータブルタイプの標準ズーム「HZK24-300mm」、2024年に広角ズームの「HZK14-100」も相次いで製品化した。エクステンダーの使用でスーパー35mmとフルサイズ両方に対応するのはボックスレンズと同じだ。
放送用レンズと同じ使い勝手でシネマカメラに対応したということは、明らかにこれで映画を撮るためではなく、ライブやテレビ放送向けだ。
一方キヤノンは、放送用2/3型レンズながら、新たな映像表現として背景を大きくぼかせる「NOVEL LOOK」という新機能を開発、25年4月に提供を開始した。対応レンズは、ボックスレンズの「UHD DIGISUPER 122/111」だ。これに光学系パーツを組み込むことで、シネマレンズのように浅い被写界深度を実現する。この機能は、ズームデマンドのスイッチで簡単にON・OFFできる。
こちらは従来型の放送用カメラで、シネマ風の映像表現を実現するというコンセプトである。
これまでスポーツ中継は、よりリアルに生々しく、隅々まではっきりくっきりが良いとされてきたわけだが、ここにきて被写界深度は浅く、より見せたい被写体をはっきり分けて撮るという方向に大きく反転することになった。
この背景には、フォーカスにシビアな4K撮影がスタンダードとなったことで、カメラやセンサーが自動で被写体認識してAFを外さないようになったこともあるだろう。飛んでいくボールを追うといったショットには被写界深度の深いカメラが用いられるだろうが、選手の顔や姿は印象的に撮るという格好で使い分けることになる。
この撮影手法はすでにヨーロッパが先行しており、今後日本やアメリカが後追いするのか、このNABで試されることになったわけだ。放送系のライブカメラマンも、これからはシネマレンズやシネマカメラも使えるようにならなければ勝負できないということになりそうだ。
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