上記の例は、もともとブロードキャストとは関係なかったカメラメーカーが、シネマカメラを使った放送システムを構築したという例である。
放送用機器に強いソニーでも、シネマカメラとしてすでにVENICEやVENICE 2、VURANOといった製品が知られる一方、αの技術を応用したCinema Lineとして、FX6、FX3、FX30、FR7といったカメラもラインアップしており、すでにカメラは放送機器よりもシネマに寄せている。さらにスーパー35mm4K単板センサーを搭載した放送用カメラとして、「HDC-F5500」もある。
こうしたカメラを組み合わせて、NAB2025では「Cinematic Live Production」というソリューションを発表した。すでにCCUやRCPなどは自社製品があり、サードパーティー製品を使わなくてもシステムが組めるというのが強みだ。
加えてソニーは以前から「NETWORKED LIVE」として、IPおよびクラウドを活用したライブソリューションを展開しており、これにシネマカメラを組み合わせることもできる。
フランスの事例として、「PhotoCineLive」というプロダクションでは、複数台のVENICE 2を使い、ライブコンサート、演劇公演、ファッションショー、企業イベントなどのライブコンテンツを制作可能なOBバンを構築した。最大20台のカメラをコントロールできる、12のワークステーションを搭載する。
「これから」ではなく、「もうやっている」というのは、かなりの説得力がある。
大型スイッチャーの大手Grass Valleyは、昨今はほとんどの機材をクラウド化しており、IPの旗手として業界をリードしている。一方放送用カメラは日本ではあまり導入事例がないが、カメラに関してはもともとフィリップスの放送機器部門を買収したことがきっかけてスタートしていることから、ヨーロッパでは人気が高い。
LDXシリーズは放送用カメラとしては早くからIP伝送に対応したことで知られるが、今回発表された「LDX 180」は、ライブプロダクション向けとしては同社発のシネマティックカメラとして登場した。
自社開発となるスーパー35mm単板イメージセンサーを搭載しており、マウントはPLマウント。スポーツやコンサートなどのライブイベントを、被写界深度の深い映像で撮影できる。カメラシステムとしては従来のLDX150などと共通なので、アクセサリー類はそのまま使用できる。
ARRIやREDが、シネマカメラにモジュールをくっつけてライブ化するのに対し、こちらはあくまでも放送用カメラとしてのベースを持ちながら、センサーを大型化してPLマウント対応にしたという流れである。この点ではソニーの「HDC-F5500」と同じアプローチだ。
ネット配信機材として大きなシェアを占めるBlackmagic Designは、以前からPocket Cinemaシリーズなどライトユースなシネマカメラをリリースしてきた。一方ライブ放送や配信用のカメラとしてはStudio Cameraシリーズもある。
昨今はシネマ用のガチカメラとしてURSAシリーズやPYXISシリーズを展開しているところだが、URSAシリーズには「URSA Broadcast G2」といった放送向けのものもあり、ラインアップとしては混ざりつつある。
そんな中で今回のNABでは、シネマ用のPYXISシリーズを放送向けカメラにビルドアップする、「Blackmagic PYXIS Pro Handle」および「PYXIS Pro Grip」を発表した。PYXIS Pro Handleには後部にビューファインダが、全部にはステレオマイクが内蔵され、PYXIS Pro GripにはズームロッカーとRecボタンがある。PYXISを放送用ハンディカメラとして使っていこうというわけだ。
もともとPYXISには外部収録用として12G SDIの出力があるが、内蔵のLUTを適用した状態で出力できるため、ライブカメラとしても利用できる。既存の「PYXIS 6K」は 4K解像度にすると画角がクロップされていたが、NABで発表された「PYXIS 12K」は解像度を変更しても内部でスケーリングするので、フルセンサーサイズで撮影できるようになった。またBlackMagicDesignのカメラはAF機能が弱かったが、次第に被写体追従型のAF機能を順次アップデートで追加しており、今後PYXISシリーズにも追加される見込みだ。
12G SDI対応スイッチャーは同社にはいろいろあるが、今回は4MEで80入力48出力の「ATEM 4 M/E Constellation 4K Plus」をラインアップに追加し、大規模ライブスイッチングに対応できるようになった。
Blackmagic Designでは、明確にシネマライブという格好でのソリューションはうたっていないが、機材的にはもうやれるようになってきている。あくまでも自分自身の知識をベースにインテグレーションすることになるが、相当の低コストで実現できるところが強みだ。
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