ITmedia NEWS > 製品動向 >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

Googleは検索を“捨てていない” 「AIモード」投入、狙いは過去資産の徹底活用(1/2 ページ)

» 2025年05月23日 08時30分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

 Googleの収益は、いまだ「検索」とそれにひも付く「検索連動広告」から生まれている。

 2022年に生成AIが大きな話題になって以降、「生成AIはネット検索のエコシステムを揺るがす」といわれてきた。OpenAIなどの新興勢力に対し、Googleは後手に回っている……との見方はそこから生まれている。

 今回のGoogle I/Oで、同社は「AIによる検索新時代」をアピールした。その中核にあるのが、AIを使った検索モードである「AI Mode」だ。検索のユーザーインタフェースを大きく変えるものであり、「ついにGoogleが、既存検索からAIへ切り替えた」とも言われている。

アメリカではAIを本格的に使った「AI Mode」がスタート

 では、それは本当に正しいのだろうか?

 確かに大きな変化ではあるが、どうも捉え方はズレているのではないか。

 Google I/Oを取材し、同社検索技術トップのリズ・リード氏へもインタビューし、彼らの考えがわかってきた。

Googleで検索技術担当バイスプレジデントを務める、リズ・リード氏

 Googleは本業である検索で、どの方向に向かおうとしているのだろうか? その点を考察してみた。

AI Modeは検索、会話を楽しむものではない

 生成AIと検索の関係は、そんなにシンプルなものではない。

 Google・検索技術担当バイスプレジデントのリズ・リード氏は、「他のチャットbotと比較すると、多くの異なるユースケースに焦点を当てている。AI Modeは検索であり、会話を楽しみに行く場所ではない」と話す。

 生成AIベースのチャットサービスはいろいろなことができる。一方で、一番向いていないのが「知らないことを質問し、答える」ことだと言っていいかもしれない。1つの事実として、生成AIがそのまま検索エンジンを代替するのは難しいのは間違いない。生成AIになにかを尋ねても正しい答えが返ってくるとは限らず、いわゆる「ハルシネーション」はまだまだ多数ある。

 そこで、「生成AIがWebを検索してまとめ直す」「多数のWebへとアクセスし、その情報を考察してレポートにする」という方法が増えている。前者は「Perplexity」のようなサービスであり、後者はいわゆるDeep Searchである。GoogleはGeminiを持っており、Geminiで似たようなニーズに対応しようとしているものの、それは「検索」とは違うものだ。

 ユーザーの視点から見れば「大きなテキストボックスに文章を入力し、なにかの結果を得る」という意味では似た存在だが、求めるものはイコールではないし、アウトプットも同じではない。

 ではGoogleはどんなアプローチを採ったのか?

 1つは、2年前に「SGE」として発表され、現在は「AI Overview」として日本でも公開されている機能だ。こちらはネット検索をAIがまとめたものが一番上に表示される形であり、「従来のネット検索のまま、まとめを表示するもの」という形だ。

すでに日本でも使える「AI Overview」

 現状精度に課題は見られるものの、利用は伸びているという。Google I/O の基調講演でも、アメリカとインドの数字を示し、AI Overviewの利用が伸びていることが説明された。

基調講演で示された、AI Overviewの成長状況

 次が、25年に本格展開がアナウンスされた「AI Mode」だ。こちらはAIチャットサービスと同じように答えがまとめられるだけでなく、一番下に「さらに質問する」テキストボックスが用意される。

英語でのAI Mode。Google検索に「AI Mode」ボタンが出てきて、大きなテキストボックスに情報を入力する

 形としては異なるが、「双方がもたらす結果は似ている」とGoogleは説明する。

 それは「いままでより複雑な検索が行われるようになる」ということであり、「複雑な検索が行えると、人々はさらに対象に興味を持って検索する」という点だ。

 検索はすでに「キーワードベース」ではなく、文章での検索が可能になっている。ただ、AI Overviewではそこに複雑な答えをシンプルな見かけで提供可能になっているし、AI Modeではもっとしっかりした回答が出てくる。

 特にAI Modeは検索に特化したGeminiを使っており、質問を文脈で分けて複数のサイトを検索してまとめ直す。そのため、全体としてより精度の高い回答が得られる可能性は高い。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アイティメディアからのお知らせ

あなたにおすすめの記事PR