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中古価格の高騰で“逆転現象“も──キヤノン「PowerShot G7X Mark III」と新型「PowerShot V1」を比較してみた(3/3 ページ)

» 2025年06月17日 19時00分 公開
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G7X Mark IIIのアドバンテージは内蔵フラッシュ?

 G7X Mark IIIは5年前のカメラですし、そもそも大きさも違うので、画質面などの性能ではPowerShot V1の圧勝です。とはいえ、G7X Mark IIIにもアドバンテージがないわけではありません。持った感覚は変わらないとしても、やはり小さなカバンにも収納できるコンパクトさは大きな利点です。

 そして、現在のG7X Mark IIIの世界での人気を支えているのが、内蔵フラッシュを使ったポートレート撮影のバランスの良さです。SNSで注目を集める理由がここにあります。筆者のG7X Mark IIIで撮影した「フラッシュ自撮り」を一応載せておきます。

G7X Mark IIIで撮影。内蔵フラッシュを使ったポートレート撮影のバランスの良さが人気のようです

 このフラッシュ独特の光の当たり方と肌トーンのバランスが若い世代にはむしろ新鮮なんだそうです。これはずっとカメラを使ってきた世代には驚き(と懐かしさ)しかないのですが、この内蔵フラッシュが中古価格高騰の要因になっているのですから、SNS時代、なにが受けるのか分からないものです。なお、PowerShot V1には内蔵フラッシュはありません。

 また、中古品が高価格でやり取りされているもう一つの理由として、キヤノンのコンデジの耐久性の高さも見逃せないポイントだと感じています。塗装は劣化しにくく、私のG7X Mark IIIは数年使用しても背面ディスプレイ以外(フィルムで保護しています)、ほとんどヘタレを感じません。つまり、G7X Mark IIIは中古品でも状態がいいことが予想できるのです。そのおかげで、ユーザーとしてはうれしいですが、メーカーとしてはわけわかんないことになっているのは皮肉なものです。

熱対策の違い

 両機種を長時間使用して特に際立つのが熱対策の違いです。G7X Mark IIIをWebカムとして使用すると、約30分で熱問題によりダウンしてしまうことが多かったです。一方、PowerShot V1は冷却ファンのおかげで1時間以上の継続使用でも本体はほんのり温かい程度で安定動作。コンデジをビデオ会議用のWebカムとして使う場合、この違いはかなり明確な差になってきます。

熱の逃げ場のないG7X Mark IIIと熱を逃がす場所が複数あるPowerShot V1

 なお、PowerShot V1をWebカムとして使う場合、PCにUSB-Cケーブルで接続する前に、メニューから「USB接続アプリの選択>ビデオ通話/ライブ配信」を選択しておく必要があります。出力される動画は2K(1920×1080ピクセル)の30fpsとなります。また「Canon Digital Camera」として認識されるので、EOS Webcam UtilityをすでにインストールしているEOSユーザーはご注意ください。

PowerShot V1をWebカムとして使う

カメラの世界では通常、新製品の方が高価ですが、現在のマーケットでは新しいPowerShot V1の方が場合によってはG7X Mark IIIの中古の方が安いか同等という皮肉な状況が生まれています。

カメラに限らず製品というのは、どこで火が付くのか分からないという宿命があり、SNS時代ではそれはメーカーからも見えにくくなっています。G7X Mark IIIの爆発的人気は、カメラメーカーとユーザーのトレンドが時にずれて発生することを示す興味深い事例となっています。またデジカメのような製造の難しい製品は急に需要が増えても、そんなにすぐに供給を増やせないというのも実態としてはあるのでしょう。

 ただ、すでにご説明したようにSNSで評判となった製品には、なにか特定の用途に特化して優れているという場合があります。G7X Mark IIIが中古で高騰しているからといって、だれにとってもいいカメラであるとは限らないわけです。

 PowerShot V1は最新センサーを持ち、冷却性能も兼ね備えた新世代のVlogカメラです。フラッシュはなく、大きくなりましたが、カメラの性能としては全方向に優れた性能を持っています。

 そもそも、とりあえず写ればいいのであれば、スマホで十分ということになってから、それなりの年数が経過しています。そんな中、G7X Mark IIIとPowerShot V1が同等の価格になっているのは、単に需給のバランスの問題というだけではなく、カメラを性能だけで選ぶ時代ではなくなったことの象徴として見ることもできます。G7X Mark IIIに寄せられている、このフラッシュとこの大きさが最高なんだという意見は一笑に付す内容ではないのです。

 カメラを作っている人たちのことを考えるとメーカー受難の時代だなあと思う反面、ユーザーとしては選択肢のあるカメラ人生を楽しむことができるおもしろい時代だなと思います。なお、私は手持ちのG7X Mark IIIをうまく売り抜けて、最新デジカメの資金にしたいと考えています。そりゃ、基本的には最新のカメラは最高のカメラですからね。

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