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メタバースは終わってしまったのか? “コロナ禍後の仮想空間”の現在地 日常として定着しないワケ(4/5 ページ)

» 2025年07月02日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 メタバースを巡る技術は日々進化しているが、まだ一般の人々が気軽に参加するという環境には至っていない。参加のハードルをさらに下げ、その魅力を上げるために、いくつかの技術進化が期待されている。

 まずはデバイス系の進化だ。もちろんメタバース系サービスにはVRが必須というわけではなく、PCやスマホ上で実現しているものも多いが、メタバースの価値をフルに引き出すためには、VR環境が手軽な形で提供されるようになることが望ましい。

 現在のVRヘッドセットの多くは、まだ大型でかさばり、重量もあるため、長時間の日常的な使用には向かない(快適さや実用性に欠ける)と指摘がある。また価格も高く、例えばApple初のMRヘッドセット「Apple Vision Pro」は、もっとも廉価な256GBモデルであっても約60万円という価格設定となっている。

 米国で行われたアンケート調査では、回答者の29%が「機器の高額なコストがメタバースへの参加を制限する主な要因だ」と回答している。また少し古い調査になるが、22年3月に米国で行われた別のアンケートでは、メタバースを試すかどうかの決定において非常に重要な要因として「低価格のVRヘッドセット」を選んだ回答者は24%、「より多くのメタバースコンテンツ」の15%、「友人や家族がメタバースを利用していること」の14%を上回っている。

 これらの結果を考えると、まずはデバイスの小型化と低価格化が求められるところだろう。

生成AIはメタバースの追い風に

 またメタバースのコンテンツを安定して配信するためには、当然ながらより堅牢なネットワークインフラも欠かせない。没入型の仮想世界では、詳細な3Dグラフィックス、センサー入力、多数の参加者間でのリアルタイムのインタラクションなど、膨大な量のデータをリアルタイムで送受信する必要がある。

 十分な帯域幅と低遅延を実現していないと、ラグやバッファリング、切断が頻繁に発生し、すぐに没入感が損なわれてしまう。今日のネットワーク、特にインターネット接続の少ない地域や地方部では、まだこれらの要求に対応できていないことが多い。メタバースの潜在的な市場を拡大するという点で、ユビキタスで高性能なネットワークがより広い地域で整備されなければならない。

 メタバースの世界においても、AIのさらなる進化が期待されている。メタバース空間を構築し、よりリアルに見せるためには、その空間内にある広大な風景や多種多様なオブジェクト、さらに無数のキャラクターたちを造形しなければならないが、その作業の支援にAI技術、特に生成AIを活用することが始まっているのだ。

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