これらの事例は、ビジネスとしてのメタバースの難しさを如実に物語っている。初期投資や運営コストが高い一方で、収益化までの道のりは長く、多くの企業が事業継続を断念せざるを得ない状況に追い込まれている。特に日本国内では、VRヘッドセットの普及率が低いことも相まって、思うようにユーザーを獲得できていないケースが目立つ。
一方でメタバース市場の予測は、強気の見通しを示しているところが目立つ。例えば、インドのリサーチ会社であるPolaris Market Researchは、24年のメタバース市場の規模が約1070億ドル(約15.6兆円)に達したと推定しており、それが34年には約4兆8000億ドル(約700兆円)にまで拡大すると予測している。25年から34年にかけての年平均成長率(CAGR)は、実に46.3%だ(これは約2年で市場規模が倍になる計算になる)。他にもさまざまな調査会社が「メタバース市場は今後も順調に成長する」と予測している。
また24年10月に総務省が発表した「安心・安全なメタバースの実現に関する研究会報告書2024」でも、国内のメタバース市場規模について、22年の1377億円から、27年には2兆59億円にまで成長すると紹介している(これが正しければCAGRは71.4%となる)。
こうした強気の予測の背景にあるのが、主要プレイヤーの着実な成長だ。2000年代から2010年代にかけて登場したメタバース企業が手堅いビジネスを展開し、ユーザーの獲得を続けている。
06年に正式リリースされた「Roblox」は、その代表格の一つといえるだろう。ユーザーが自由にゲームを作成・共有・プレイできる世界最大級のオンラインゲームプラットフォームで、そこから「ゲーム版YouTube」とも呼ばれている。同社の発表によれば、24年第4四半期の時点でデーリーアクティブユーザー数は8530万人、1日の平均滞在時間は2.4時間となっている。
またRoblox上におけるクリエイターの収益は総額9億2300万ドル(約1350億円)に達するなど、独自の経済圏を形成している。メタバース系プラットフォームの先駆けとして、ゲーム以外にもバーチャルコンサートやソーシャル体験など、多様なコンテンツを提供している点が評価を受けている。
「VRChat」は17年にSteamで正式リリースしたSNS型メタバース・プラットフォームだ。アバターを通じて仮想空間で交流や経済活動ができ、イベントや会議なども開催できる。VRChatはユーザーがコンテンツを自由に作成し共有することを奨励しており、これにより活気あるコミュニティーを形成している。
デーリーアクティブユーザー数は公開していないものの、メタバース文化に詳しい個人VTuberのバーチャル美少女ねむさんのnote記事によれば、VRChatの同時アクセス数は25年1月1日に約13万7000人に到達。これは24年1月1日の記録であった約10万6000人から30%ほど成長している。
ゲーム好きにはおなじみ「Fortnite」も、単なるオンラインゲームの枠を超えた存在となりつつある。17年に米Epic GamesがリリースしたFortniteは、当初は協力型のサバイバルゲームが主だったものの、後に登場した「バトルロイヤル」モードが世界的な人気を博してユーザーを増やした。
その後はユーザー間の交流を促すソーシャルハブとしての機能を強化し、音楽イベント、映画のトレーラー公開、ブランドとのコラボレーションなどを開催もしている。またユーザーが独自の空間やゲームを作成できる「クリエイティブ」モードも提供中で、多様なコンテンツが日々生まれている。
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