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メタバースは終わってしまったのか? “コロナ禍後の仮想空間”の現在地 日常として定着しないワケ(3/5 ページ)

» 2025年07月02日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

 実際にクリエイティブモードでユーザーが費やした時間は、24年に総プレイ時間の36.5%を占め、クリエイターには3億5200万ドル(約510億円)が支払われたと報じられている。

 25年3月の時点で、Fortniteの登録プレイヤー数は約6億5000万人、デーリーアクティブユーザー数は6000万人以上であるとの報道も。別の記事によれば、ピーク時には1日に4470万人がプレイし、同時接続プレイヤー数が1434万人に達したこともあるほどで、その人気ぶりがうかがえる。

 他にもブロックチェーン技術を基盤とした分散型メタバース・プラットフォームである「Decentraland」や、同じくブロックチェーンベースのメタバースで、ボクセルアートが特徴の「The Sandbox」などがメジャーなサービスとして浮上し、成長を続けている。こうしたことを考えると、強気の市場予測も納得できる。

メタバースは「日常化」するのか?

 一方、こうしたプラットフォームの成長が、まだ局地的なものにすぎないとの評価もある。ユーザーが一部の層に限られていたり、用途が限定されていたりするという指摘だ。確かに「何らかのメタバースに、ゲーム以外の目的で毎日ログインしている」という人は、まだ主流派ではないだろう。

 こんなデータがある。博報堂DYホールディングスが25年3月に発表した「メタバース生活者定点調査2024」によれば、国内においてメタバース関連のサービスを認知している人は38.4%、メタバース関連のサービスを利用したことがある人は全体の8.7%という結果が出ている。ちなみに23年度の同じ調査では、それぞれ40.5%、8.4%という結果で、ほとんど変化していない。

 ちなみに日本リサーチセンターが25年4月に発表した「生成AIの利用経験 2025年3月調査」によれば、生成AI計の利用率は2024年6月の15.6%から2025年3月には27.0%へと増加するなど、生成AIという存在が着実に定着しつつある様子がうかがえる。

 さらにこんなデータもある。現在のメタバース利用者のうち、10〜20歳の年齢層が最も多く、全体の38%を占めているという。それに続くのが21〜35歳の年齢層で、36%を占める。さまざまなメタバース系サービスが登場しているとはいえ、それを十分に楽しむためには、高性能のPCやVRゴーグルといった端末が必要になる場合がある。そのため、デジタルに精通している若い世代がメタバースをけん引しているのだろう。

 もちろんそれが悪いわけではない。新しいテクノロジーは若い世代から普及を始めるのが常だし、キラーコンテンツが出れば一気に状況が変わる可能性もある。またあらゆるテクノロジーが「日常化」しなければならないというものでもない(例えばドローンはすっかり身近な存在になったが、皆が皆そのパイロットになったわけではない)。

 しかし2年で倍になるという急速なスピードでメタバース市場が拡大するためには、さらに一般の人々の参加を促す変化が必要になるだろう。

「ヘッドセットが面倒」──メタバースの弱点

 少し前になるが、22年10月に米The Vergeが「Meta’s flagship metaverse app is barely used by the employees building it」(Metaのフラッグシップ製品であるメタバースアプリは、開発している従業員からほとんど利用されていない)という記事を公開している。

 それによると、The Vergeが入手した社内メモから、MetaのVRソーシャルネットワーク「Horizon Worlds」(同社の主力メタバースアプリ)が多くの品質問題を抱えており、開発チームの従業員ですらほとんど使っていないことが明らかになったという。同アプリは21年12月にMetaの「Quest」ヘッドセット向けにリリースしたもので、「ヘッドセットの装着・セットアップが面倒」「セットアップに時間がかかる」といった不満が漏れているそうだ。

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