「『こころ』における先生の動機は?」「『羅生門』の続きを書いて」――そんなリクエストに応えてくれる、“文学特化型”のAIチャットサービスが登場した。名古屋大学と桜美林大学、東京大学による研究グループは7月21日、LLM(大規模言語モデル)に青空文庫のデータを参照させて回答を得る、RAG(検索拡張生成)型のAIチャット「Humanitext Aozora(ヒューマニテクスト青空)」を公開。作品について質問したり、指定した作家の文体で物語を書いてもらったりできるという。
Humanitext Aozoraは、青空文庫の収録作品のうち、約1000人の著者による約1万7000作品を参照した回答が可能なAIチャット。対象の作品はいずれも著作権が失われている。
用途ごとにモードを使い分けることが可能で、(1)作品に関する質問に対し、典拠と共に簡潔な回答を行える「Q&Aモード」、(2)専門家の視点で、時代背景も含めた多角的な分析を行う「詳細解説モード」、(3)指定した作家や登場人物になりきったAIと対話できる「対話モード」、(4)指定した著者や作品の文体などに基づき、物語の続編やパロディー作品などを出力できる「創作モード」──が利用できる。
LLMは、23日時点でGoogleの「Gemini 2.5 Pro」の他、OpenAIの「GPT-4.1」「o4-mini」「o4 mini high」を選択可能。当面の間は無料で、ユーザー登録なども不要としている。ただし今後、複数のAIモデルに1つのAPIキーからアクセスできるプラットフォーム「OpenRouter」経由でユーザー自身がLLMの利用料を支払う形に切り替えるという。
Humanitextの公式Xアカウントでは、「『人間失格』の語り口で、今日の満員電車の体験を短く描写してください」「蜘蛛の糸がゆで過ぎた揖保乃糸の場合、犍陀多(かんだた)はどうしただろうか」といった、実験的な作例を紹介している。
同研究グループは24年5月に、西洋古典に特化したAIチャット「Humanitext Antiqua(ヒューマニテクス・アンティクア)」を公開しており、Humanitext Aozoraはいわばその“日本版”に当たる。Humanitext Antiquaのリリース時には「古典原典へのアクセスのハードルを大幅に下げることで、専門家以外の研究者や学生、一般の人々も日本語で西洋古典のリソースを気軽に引用・参照・解釈できる環境を提供する」としており、Humanitext Aozoraも同様の目的で開発・提供に至ったとみられる。
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