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“青空文庫に特化したAIチャット”公開、文豪になりきっての回答も 「李徴が虎ではなく、ハムスターになっていたら?」と聞いてみたら……(2/3 ページ)

» 2025年07月24日 07時10分 公開
[三好一葉ITmedia]

「走れメロス」「山月記」で試してみた

 Humanitext Aozoraの実力はいかなるものか。LLMにGemini 2.5 Proを指定し、太宰治の作品を参照の対象とした上で、詳細解説モードで「『走れメロス』において、王はなぜ最後にメロスを許したのでしょうか」と質問してみた。すると、「王の『人間不信』と『孤独』」「王の予測を覆したメロスの帰還」「王の心を打った真実の光景」という3つの観点が提示され、

王がメロスを許したのは、単なる温情や気まぐれではありません。それは、メロスとセリヌンティウスが命がけで示した「信実」によって自らの過ちを認め、人間不信という名の孤独から自らを救済しようとする、王自身の魂の叫びだったのです。

 と締めくくられる、2000字超の詳細な解説が出力された。

photo 詳細解説モードでの出力結果

 続いて、GPT-4.1を指定し、参照する著作として中島敦の「山月記」を設定。創作モードで「李徴が虎ではなく、ハムスターになっていたら、そのいきさつをどのように語っただろうか」と聞いてみたところ、

己が、かくも小さき獣となり果てた経緯を、君は問うのか。

 という語りから始まり、

暁の気配が忍び寄った頃、己は近くの水面に姿を映してみた。そこにあったのは、ふくよかな頬袋と、小さき前歯、小豆色の瞳を持つ、一匹のハムスターであった。己は、初めそれを夢と思いたかった。しかし、幾度も身を振り、水面を叩いても、現実は変わらなかった。

(中略)己にも、はっきりしたことは分からぬ。ただ、思い当たるのは、己が世と人との交わりを厭い、ひたすら己の小さき自尊心と、卑しい羞恥心とを膨らませてきたことだ。人と交わることを恐れ、詩を磨くことにすら臆して、ただ己の内なる思いだけを、頬袋の中に蓄えるばかりであった。

 と続く作品が出力された。この他、対話モードに切り替えて話しかければ「李徴との会話」なども行える。想像力次第で、使い方はさらに広がりそうだ。

photo 創作モードでの出力結果
photo 対話モードでの出力結果

 開発に携わった名古屋大学の岩田直也准教授は、自身のXで「大量のデータから適切な文脈を抽出するため、クエリ拡張やハイブリッド検索、リランキングなどを工夫した。ぜひ試してみて、面白い生成を共有してほしい」と呼び掛けている。

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