バリラックスの新しい累進度数レンズ「バリラックス・フィジオ・エクステンシー」は、公式サイトの説明によると「瞳孔の動的データと人工知能AIに基づき設計されたバリラックス フィジオ エクステンシーは、瞳孔の変化に合わせてレンズ設計を最適化。移り変わる光の下でも、シャープな見え心地を追求し、最適な視界の提供を目指したレンズです」ということなのだが、明るさによって瞳孔の大きさが変化することと、メガネの見え方にどういう関係があるのか、さっぱり分からない。どういうことなのか?
そこで今回、バリラックスの日本での窓口になっているニコン・エシロールの御好意で、このフィジオ・エクステンシーを試す機会を得た。既に、バリラックスの累進度数レンズのフラグシップである「バリラックスXR」を愛用している私は、その「瞳孔の変化」をメガネにどう反映させているのかに興味があったこともあり、またフラグシップとの違いも気になったので、是非とお願いしてフィジオ・エクステンシーを提供してもらった(機材提供:ニコン・エシロール)。
以下は、実際にフィジオ・エクステンシーを2カ月ほど使ってみたことで分かったことと、ニコン・エシロールの担当の方に取材した内容から、この新しいレンズが、実際のところ、どういうものなのかということについて書いたリポート。製品の提供は、特に記事化を前提にしたものではなかったのだけど、メガネのレンズは、実際に試さないと、それがどういうものかも分からないし、評価もできない。せっかくの機会なので、ここに書いておきたかった。それこそ「分かりにくいけれど面白い」モノだと思うのだ。
「目ってすごくて、遠くを見てるときはちゃんと瞳孔が開いていくんですけど、近く見るときは瞳孔は閉じて、つまりカメラで言うと絞り込んでいくっていうような自動調節の機能があるんです」と、瞳孔の変化をどうメガネのレンズに反映させるのかということについて、ニコン・エシロールの井上陽奈さんは、まず、瞳孔が明るさだけではなく、見るものの距離でも大きさを変化させるものだということを教えてくれた。
つまり、瞳孔は明るいところでは閉じるし、暗いところでは開くという「露出」の調整だけでなく、カメラでいう「被写界深度」の調整も自動的に行っているわけだ。しかも、それは、ぼかしをコントロールするのではなく、対象をよりハッキリと見るための調整。近くを見る時は絞り込んだ方が細部がシャープになるし、遠くは細部を見る必要性は薄いため、瞳孔を開いて視界を明るくする。
瞳孔の大きさの変化と、その際に視線がレンズのどこを通るのかのイメージを図にしたもの。上が散瞳(さんどう)時、下は縮瞳(しゅくどう)時。こうして見ると、確かに瞳孔の変化が累進度数レンズに与える影響は大きいような気もする「瞳孔の動きのパターンは、どういう距離感で、この年齢で『そこにあるモノ』を見るときに、この照度ではどうか? といった具合に、組み合わせが無数にあって、だから、従来のレンズは、そのどこかを切り取って、レンズに反映させることしかできなかったんです」と井上さん。
それはそうだとしか言いようがない。条件のパラメーターが多過ぎるのだ。
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