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新しい老眼鏡で視界がシャープになった話 AIで“瞳孔の変化”をレンズ設計に取り入れるアプローチとは?分かりにくいけれど面白いモノたち(3/5 ページ)

» 2025年07月30日 07時14分 公開
[納富廉邦ITmedia]

 この見え方は、バリラックスXRを含む、これまでのメガネにはなかったもの。極端に視力が悪い私だから、その効果が顕著に出ているのかもしれないが、線がクッキリ見えるというのは、例えば文字を読む時や、階段を昇降するときなどに威力を発揮する。実は、バリラックスXRを掛けていても集中して本を読みたい時など、同じバリラックスの近距離専用レンズ「デジタイム」を装着したものに掛け替えていたのだが、フィジオ・エクステンシーだと、そのまま読書に集中できる。

 多分、フィジオ・エクステンシーの最大の魅力は、この、シャープに、ハイコントラストに見えるという部分なのだと思う。それに加えて、累進度数レンズにありがちの、実際よりモノが若干小さく見えるという問題が、ほとんど感じられないのもありがたい。

 特に、私のように近視の度数が高い場合、それを矯正しようとすると、どうしてもモノが小さく見えるのはある程度は避けられない。ところが、このフィジオ・エクステンシーだと、それが全く感じられないのは、“度数は変えずに、拡大率だけ変える”という設計が含まれているからだという。

度数を変えずに拡大率を変える技術を、バリラックスでは「デュアル・ブースター」と呼ぶらしい。度数と拡大率をレンズの両面に振り分けて設計する、両面非球面レンズだからできる技術だそうだ

 「拡大率はほんの少しだけ、大体1から3%未満ぐらいで変えています。しかも手元を見る部分だけなんです。特に近視が強い方だと、普通の正視の方が見るよりも文字がそもそも小さくなっているので、ピントが合っていたとしても認識しづらいという問題がどうしても出ます。なので、そこを拡大するわけです。逆に、遠くを見る場合、凄く小さなものを認識する必要性があまりないので、そこを3%くらい拡大しても、情報を認識する上ではそこまでの効果がないんです。だから、このレンズでは、手元を見る部分を少し拡大して見せることで、本やスマホの文字を本来の大きさに戻すといった感じの設計をしているわけです」と井上さん。

 なるほど、それは分かる。しかし、度数を変えずに拡大率を変えるということを1枚のレンズで出来るのだろうかと、思ったのだが、そこはこのレンズが両面非球面レンズだから可能になるということだった。

 つまり、片側で度数を、もう片側で拡大率をといったことが行えるのだという(実際は、もっと複雑なことをやっているのだけど、ザックリ言えば、そういうことみたいだ)。井上さんの言葉を借りれば「レンズ1枚の表側、裏側に分散させて形状を変えてあげることで拡大率が変わってきます」だそうだ。なんとなく分かるような気がした。実際、そのおかげで明らかに本が読みやすくなっているのだから、「度数を変えずに拡大率を変える」が実現できているということは間違いないのだ。

「バリラックス フィジオ・エクステンシー」のテストレンズ。これを目の前にかざして見るだけでも、レンズの特長が分かるくらい、見え方に個性がある

 今回も、実際に度数を計り、メガネとして仕立てて下さったのは、目黒の伏見眼鏡店、店主の伏見浩一さんなのだけど、累進度数レンズを長く売り続け、バリラックスのレンズにも精通した彼によると「フィジオ・エクステンシーは、これまでの累進度数レンズの技術の集大成にして最高峰」なのだという。

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