「本棚は人柄を表す」「読書をすれば人生が変わる」などとよくいわれる。実際、仕事で必要な知識や考え方を、読書を通して学ぶ人も多いだろう。とはいえ仕事で忙しい中では、成長や学びにつながる本を効率的に探すのは難しい。
そこで本連載では、今をときめくIT・Web関連企業の経営者の本棚や愛読書をのぞき見。現代社会で戦うIT経営者たちがどんな考え方に影響を受けているのか、ヒントを探る。今回は、「楽楽精算」などのクラウドサービスで知られるラクス経営層の本棚や愛読書をのぞき見る。
※本文中のプロフィールは取り上げた企業が提供したもの、またはその企業公式サイトから引用したものです。
私の本棚を振り返ると、経営学や組織論、起業や投資に関する本が多く並んでいます。ジャンルとしては「企業の成長戦略」「経営者の意思決定」「人や組織の可能性を引き出すための心理学」が中心です。
会社経営に携わる中で、「どうすれば事業を持続的に成長させられるか」「どうすれば人が力を発揮できる環境をつくれるか」を常に考えており、こうしたテーマへの関心が自然と選ぶ本にも表れています。日々の意思決定や組織づくりの場面で、これらの本から得た知見が寄りどころとなっています。
私にとって読書は、単なる知識の吸収ではなく、経営判断や組織文化を形づくる「思考の軸」を磨くための営みです。これからも、不確実な環境の中で企業を前進させるための知恵や、人の可能性を最大限に引き出すヒントを学び続けていきたいと考えています。
特に印象深いのは、「ビジョナリー・カンパニー4」(ジム・コリンズ著)です。本書にある「好調な時も不調な時も同じ歩幅で前進する姿勢」や「大きな賭けをする前に小さく実験し、実証データをもとに判断する考え方」は、経営における一貫性と慎重さを同時に説いており、非常に共感しました。
私自身も、順境・逆境を問わず安定して成長を積み重ねること、そして大胆な挑戦の前に確かな裏付けを得ることの重要性を学びました。これは、今後のラクスの経営においても寄りどころとなる考え方であり、組織の持続的な強さにつながると感じています。
もう1冊挙げるなら、「マインドセット」(キャロル・S・ドゥエック著)です。この本は、固定的な思考にとらわれず「しなやかマインド」を持ち続けることの大切さを改めて教えてくれました。特に印象的だったのは、「できるかどうか」を先に決めつけるのではなく、「できると考えてまずやってみる」ことの重要性です。
経営の現場では即断が求められる場面が多いですが、その際に未来の成長可能性を基準に判断する視点を与えてくれました。この学びは、社員一人一人が挑戦を恐れず、失敗から学び続けられる組織文化を築くうえで大きな力になると感じています。
1973年生まれ。神戸大学経営学部会計学科を卒業し、日本電信電話(現在のNTT)に入社。2000年にラクスの前身となるアイティーブーストを設立。10年に「ラクス」に社名変更し、15年に東証マザーズへ上場。22年にプライム市場に移行。
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