創業期からSaaSの事業開発・グロースに携わる中で、「教科書のない状況」で意思決定を繰り返してきたため、体系的な思考を素早く手に入れる手段として書籍を重視しています。特に「マネジメント」「顧客起点」「イノベーションの拡がり方」に関心があり、ビジネス書では異業種の取り組みでも自社のビジネスドメインに応用すべく、原理原則を抽出して転用するような読み方を意識しています。漫画や小説からも顧客理解や組織マネジメントに必要な共感力・想像力を養っています。
書籍からの学びは、組織拡大期のマネジメントや事業仮説検証、部下育成、経営・事業の意思決定の再現性向上に役立っており、今後も挑戦の糧とします。
最も印象深いのは、ラクスの組織拡大期に読んだ「HIGH OUTPUT MANAGEMENT」(アンドリュー・S・グローブ著)です。マネジャーの仕事をレバレッジの視点で捉え、マネジャーの成果を自分が直接行った仕事量ではなく影響範囲の総和で測ることや、会議を意思決定プロセスとして設計すること、指標→活動の順に設計する重要性を学びました。自社の規模拡大に伴い、マネジャー層の育成を進める際にも再読し、これからも大切にしたい1冊です。
「たった一人の分析から事業は成長する 実践 顧客起点マーケティング」(西口一希著)は、製品のPMF(プロダクトマーケットフィット)前や真に顧客に必要とされる製品開発の考え方を組織に浸透させるフェーズで読みました。「特定の一人(N1)」に対する深い洞察から仮説を立てるアプローチ、顧客ターゲットをセグメント化し余白を可視化するフレームワークなどが、事業仮説検証や課題定義に極めて有効だと感じています。
「みんなのフィードバック大全」(三村真宗著)は、フィードバックを経営・組織の基盤スキルとして体系化した実践書です。社内で部下へのフィードバックに悩むマネジャー層に対して、体系的かつ実践的な書籍を紹介したいと考えていたころに出会いました。
「注意・指摘だけでなく、望ましい行動の正の強化(ポジティブ)が生産性の母数を広げる」など、行動変容を促す伝え方やポジティブ・フィードバックの重要性を学び、社内のマネジャー層のフィードバックスキル向上につなげることができました。
1974年生まれ。大阪大学 大学院にて人工知能を研究。2001年ラクス入社。ラクスの中核事業を立ち上げ、グロースを経て21年取締役就任。25年7月よりCAIO(Chief AI Officer/最高AI責任者)を兼務。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR