小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
"非クリエイター層"に本腰のAdobe 生成AIで激変するクリエイティブ領域、それを担うAI戦略とは(3/3 ページ)
クリエイティブにAIをどう持ち込むか
現時点において、プロクリエイターがAIを使ってコンテンツを作ったと公言するのは、自らの価値を毀損しかねない状況にある。よってAIの利用は、本番制作前のプリプロダクションの段階に限られる傾向にある。
Adobe Fireflyでは、自社製AIだけでなく多数のパートナーモデルが使用できるようになった。個別に利用契約する必要もなく、生成クレジットもAdobeのクレジットが利用できるため、無駄がないのが特徴だ。
もちろん、プロンプトを入力してゼロから画像生成させることも可能だが、そうした手法はノンクリエイター向けのAdobe Expressのデモで紹介された。
一方でプロ・クリエイター向けとしては、素材はオリジナルコンテンツを食わせて、それを合成するためにAIを使うという方法論が紹介された。この2つのアプローチの違いは、デモの中で慎重に区別されていた。
「Firefly Boards」は、アイデアを練るためのプリプロダクションツールだが、素材として自分の作品や自分で撮影した写真を取り込み、それらを複数の生成AIで合成処理のバリエーションを作ることができる。AIによってテイストや得意分野が違うため、結果が異なるわけだが、そうしたことも比較検討できる。
オリジナル素材から合成は、従来はマスク切りしてレイヤーで合成するという手法が一般的だったが、例えばPremiereではワンクリックでオブジェクトマスクを生成したり、あるいはPhotoshopではAIアシスタントの導入により、マスク切り自体をAIにやらせるという方法を提示した。
Illustratorによるベクターモデリングの可能性も示唆された。最新版のIllustratorでは、一度作った2Dのベクターモデルを、3Dオブジェクトとして自由に回転させられる「ターンテーブル」という機能が実装された。これもAIを使った機能拡張の一つである。
デモで示されたのはここまでだったが、回転して別角度から見たイラストをAIに読み込ませ、写真風にして出力するといったこともできるはずだ。こうした方法論は、CGの3Dモデリングに代わる手法ということもできる。
3Dモデリングはこれまでポリゴンモデリングが主流で、ベクターモデリングは難易度が高いことから、あまり浸透していない。だがもともとIllustratorが使えるデザイナーが、3DCGモデラーを兼任する時代の到来も予見できる。
もう一つAIの利用方法で示された方向性が、簡易アニメーション化だ。Adobe Expressでは、出来上がったデザインに対して簡易的に1~2秒の動きをつけるというデモが多用された。つまりパブリッシングは紙ではなく、Webであるというメッセージである。DTPツールであるInDesignにもアップデートがあるが、キーノートでは紹介されなかったことからも、今回はWeb上でのパブリッシングを重視したということだろう。
実際生成AIも、印刷に耐えられるほどのDPIで処理・出力できるものはほとんどないことから、現時点ではビデオサイズやバナーサイズ程度の解像度でぶん回すという方向性にある。逆に言えば、DTP解像度でAI処理が行えるような技術開発や市場開拓は、Adobe以外には不可能である。そこは競合もないことから、落ち着いて見ていられる分野だ。
次回は、キーノートやSneaksで発表された新技術を中心に、プロ・クリエイターのワークフローがどう変わっていくのか、またそれによって表現がどのように広がるのかといった可能性について、ご紹介したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
小寺信良の「プロフェッショナル×DX」
クラウド活用にリモート編集環境と、映像にまつわるプロフェッショナルの分野にDXの波が押し寄せている。プロの現場で何が起こっているのか。最新のITトピックを小寺信良氏が解説する。
この記事の著者
関連記事
こんなメディアも見られています
ITmedia NEWSに関連する情報をお探しであれば、こちらのメディアもお役に立てるかもしれません。
SpecialPR
本日の新着記事
アクセスランキング
-
1
GMO、ランサム被害にあった顧客に新しいPC提供へ 犯行グループは1人の顧客情報公開か
-
2
NECのルータ「Aterm」、PHP脆弱性の影響なし 設定画面URLの「.php」は無関係
-
3
「楽天トラベル」に不正アクセス 顧客情報最大約260万件など流出か 予約者約3.6万件のクレカ情報も
-
4
Google、プライバシーポリシーに「Gmail」「Googleフォト」のデータを広告に使う例外を追加 回避方法は
-
5
GMO不正アクセス、犯人側は「27日に顧客のPC攻撃」予告 GMOが端末回収、ホワイトハッカーが解析中
-
6
GMO、攻撃者の公開情報に「アクセスは絶対に控えて」 悪質な拡散者には法的措置を準備
-
7
「5年でバッテリーが使い物にならなくなる」は本当か テスラ「モデル3」5年目点検で分かったこと
-
8
GMO熊谷代表「社内ホワイトハッカーが事前に指摘」も対策遅れ、国に「能動的サイバー防御」要請 「責任転嫁では」SNSで批判も
-
9
「年齢は合ってますが、人間ではありません」 6歳の飼い猫に届いた“進研ゼミの案内” なぜ届いたのかベネッセに聞いた
-
10
グッスマに不正アクセス、公式EC閉鎖 会員の住所や注文履歴など漏えいか 再開目処立たず
ITmedia NEWS SNS
インフォメーション
注目情報をチェック
ITmediaNEWSをフォロー
あなたにおすすめの記事PR