もちろん、富士フイルムのフィルムメーカーとしての長い歴史の中で蓄積された膨大な資料があってのことだとは思うけれど、それだけではとても足りなかったらしい。とにかく、あらゆるメディアを調べまくった数年間があったと嶋さんは言う。国内のあちこちにあるメディア博物館的な施設にも、とにかく行きまくったという。その意味では、このジダイヤルというのは、嶋泰寿をはじめとした「商品企画メンバー」というアーティスト集団の作品と言ってもいいのかもしれない。基準はどこにもない、今までに無かった表現を、自分の中で決めていかなければならないわけで、それはもう表現だ。
その一方で、デザインと操作性の部分で気になったのは、シャッターボタンの浅さと、ホールディングのしにくさ。ホールディングに関しては、実はシャッターボタンを中指で押すようにして握ると安定することを教えてもらった。「実はパッケージ写真では中指がシャッターに掛かっているんです」と言われて見ると確かにその通り。実際に握ってみると安定するし、手があまり大きくない人でも、これなら持てそうだ。さらに付属のグリップで小指を押さえに使える。
「シャッターのクリック感はカメラとして大事なところなので、かなり頑張りました。もし半押ししようとして押しちゃったとか、指を放しちゃった場合でも、ハイブリッドモデルのEvoは撮ってすぐにフィルムが出てきません。また、動画は1秒未満だと記録しないんですよ。これも間違って押したり放したりしちゃった時の対策です」と嶋さん。
例えば、本体がもう少し薄ければホールディングしやすいのにとか、もう少し小さければ持ち歩きやすいのにとか、考えないでもないのだけど、このカメラの中にチェキプリンタが内蔵されていることを考えると、これ、かなり小さくて薄い。内部のほとんどがチェキプリンタなのに、よくまあこれだけの機能を詰め込んだものだと感心する。それでも、プリンタ内蔵の「チェキ」の形を守ることが重要なのだ。
これがチェキで、その場でプリントできるからこそ、ジダイヤルのような極端なフィルタが生きるし、「写真を撮る」という行為のハードルがぐっと下がる。何せ、「失敗」という概念がほぼ無いカメラなのだ。まあ、もちろん、設定を2000以降にして、掛かり具合も1に設定して、フレームスイッチをオフにすれば、普通の写真が撮れる。そこは「チェキ」のシャッターさえ押せば撮れるという良さ。それはそれとして、トイカメラ的な偶然ではなく、狙って面白い写真が簡単に撮れる、しかも、動画だって撮れて、それをプリントして渡せてしまう。それはもう、チェキという別ジャンルだ。
フィルムがこんなにも手に入らないのに、新製品が次々に出るのはどうなのか、という意見はあるし、「頑張って作ってるけど、全世界に供給するので生産が追いつかないんです」という富士フイルム側の言い分も仕方ない部分はある。それにしても製品が面白すぎて、もう少しフィルムが安く簡単に手に入ればいいのにと思わずにはいられないので、ちょっとここに書いておこう。
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