現時点でのAIエージェントは、いわゆるコンピューティングによるデジタル情報を操作するのみだ。よって米国では、AIに代替されうるホワイトカラーよりも、代替されにくいブルーカラーのほうが将来性があるとして、「手に職」を付ける若者が増えている。
だが昨今の中国の方向性を見ると、AIによってハードウェアを動かそうとしている。つまり、物理的に人間の行動を代行する、自律型ロボティクスである。
これが実用化されれば、我々は口頭で指示を出して手に職のある人間に仕事をさせるのと同じように、ロボットに対して口頭指示で仕事をさせることになる。
ブルーカラーが安泰なのは、多くの手作業と判断が必要な分野があるからだ。例えば水道の配管の規格が合わないとか、古すぎて部品がない状況でとりあえず漏水を止めるとかに対応できる、柔軟性が求められるからである。
だが先ほどの、人間向けホームページをやめた例を思い出してほしい。社会インフラやハードウェアも、ロボットが整備しやすいような設計や規格のものに置き換えてしまえば、ブルーカラーは必要ない。それは星新一やアイザック・アシモフが空想した、半分理想で半分悪夢の世界なのかもしれないが、もはや空想では片付けられない。
いま一度、エンタープライズ号のメインブリッジの様子を思い浮かべてほしい。音声でコンピュータに指示を与えるのは、カメラに捉えられているクルーのみだ。演出なんだからそれはそうなのだが、これを現実に置き換えるとどうだろうか。
人が複数人、同じ部屋にいる場合、全員が音声コマンドでコンピュータとやり取りできるのか。コンピュータはおそらく声紋で聞き分けるだろうが、人間側がめちゃくちゃ気が散る。
例えば今は電車内で皆静かにスマホをいじっているだけだが、全員がAIエージェントに音声コマンドで「Xのタイムライン見せて」とか「上司からのLINEに返信」とか言い出したら人間はめちゃくちゃ気が散るし、プライバシーに関わることも筒抜けである。全員がノイキャンイヤフォンの装着が義務化されれば解決するが、それは実現しそうにない。現実には周囲に無制限に拡散する音声のみに頼ることはできず、やっぱり密かに入力できるテキストは残さざるを得ない。
一方でエンタープライズ号のメインブリッジでは、宇宙船の操縦にはタッチパネルによるコンソールも併用されている。これはアプリに応じて画面が変わるGUIというよりも、固定化された専用コントローラーだ。
これが示唆するものは、音声コマンドは全員で使うことができないという問題の解決だけでなく、音声よりも手を動かしたほうが圧倒的に早い分野があるということである。
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