“AWSたまごっち”はなぜ「Azureたまごっち」「オラクルたまごっち」にならなかったか バンダイに聞いた(1/2 ページ)
AWSを採用して話題になった「たまごっちユニ」。AzureやOracleではなくAWSを選んだのはなぜか。バンダイに取材した。
バンダイが7月15日に世界同時発売した新型たまごっち「Tamagotchi Uni」(たまごっちユニ)。最大の特徴は、シリーズで初めてWi-Fiでクラウドに接続できる点だ。サービス提供の基盤には米Amazon Web Servicesのクラウドサービスを活用。SNSでは“AWSたまごっち”などと話題になった。
AWS公式ブログによれば、たまごっちユニの開発に当たっては、AWSが提供するIoT機器管理サービス「AWS IoT Core」などを活用したという。しかし、IoTプラットフォームを提供するサービスは他にもさまざまだ。AWSの競合であるMicrosoft Azure、Oracle Cloud Infrastructure上のプラットフォームに加え、KDDI傘下のソラコムやさくらインターネットといった日本企業が提供するサービスを使う選択肢もある。
もしかすると、たまごっちユニが「Azureたまごっち」や「オラクルたまごっち」と呼ばれる未来もあったかもしれない。バンダイはどういう経緯でAWSを採用したのか。同社の坂本大祐さん(トイディビジョン グローバルトイ企画部 テクニカルデザインチーム)と岡本有莉さん(同企画1チーム)に聞いた。
カギはOS? “AWSたまごっち”、AWS採用のワケ
たまごっちユニは、育てたたまごっちを専用メタバース「Tamaverse」(タマバース)に送り、世界中のユーザーが育てた他のたまごっちと交流させられる機能が特徴だ。日本国外でも販売しており、日本語含む7か国語に対応する。タマバースでは定期的に新しいイベントが開催されており、毎月違うゲームを遊んだり、そのスコアを競ったりできる。
一連の機能に役立っているのがクラウドだ。例えばタマバースにおけるたまごっち同士の交流は、たまごっちユニがWi-Fi経由でクラウドに接続し、他のユーザーがアップロードした最新のデータにアクセスすることで実現している。たまごっちユニ同士を直接つなげず、非同期かつ間接的につなげることで、子供がトラブルに巻き込まれるのを防いでいるという。
坂本さんによれば、一連の機能を実現するクラウド基盤にAWSを採用した理由は大きく分けて2つあるという。1つ目は、たまごっちユニのOSとして採用が決まっていた「FreeRTOS」をAWSが提供(2017年に買収)しており、相性が良かったためだ。
FreeRTOSはIoT機器向けのOSで、クラウド、特にAWSとの連携しやすさなどが特徴だ。たまごっちユニの開発は、企画段階で出た「世界中のたまごっちユーザーが一緒に盛り上がれるようなコンテンツにしたい」というコンセプトを重視したと岡本さん。
OSや基板の選定もコンセプトの実現を意識して進めており、クラウド連携しやすいFreeRTOSの導入も既定路線だった。さらに「他サービスと比べて(コードやシステム構成の)サンプルが多いAWSと、FreeRTOSとを組み合わせることで、当社側で書かなければいけないコードを削減する狙いがあった」(坂本さん)という。
2つ目はデバイスの認証など、セキュリティ面だ。「全世界に発売し、同じ機種でコンテンツを配信していくとなると、技術的にはデバイスの認証に加え、子どもが悪意にさらされないセキュリティが重要になる。そこを踏まえて各社のIoTサービスを比較検討し、結果AWSの問い合わせ窓口に連絡した」と坂本さん。
実際に、たまごっちユニの開発ではデバイス認証や接続の仕組みを兼ね備えるIoTサービス「AWS IoT Core」、IoT機器の大規模な監視・管理が可能な「AWS IoT Device Manegement」などが活躍したという。過去記事でも紹介した通り、AWSはたまごっちユニのシステム構成図などもすでに公開している。
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