BEMSアグリゲータが提供するエネルギー管理サービスを受けるためには、電力を計測したり監視したりするための装置が必要になる。その購入費と工事費の2分の1か3分の1が補助金として支払われる(図5)。補助の比率が2分の1と3分の1のどちらになるかは、導入する装置の機能、例えば電力使用量を5分以下の間隔で測定できるか、で決まっている(図6)。
実際に適用される補助金の金額は、装置の台数など導入するシステムの規模にもよるが、今回の計画では6万件以上が対象になっていることから、比較的規模の小さい案件が多くなるとみられ、1件あたり平均40万円から50万円程度になる見込みだ。
この補助金を活用することによって、どのくらいの期間でBEMSの導入・利用コストを回収できるのだろうか。
BEMSを利用するにあたっては、アグリゲータからエネルギー管理サービスの提供を受ける必要があり、この利用料は補助金の対象には含まれない。そのため初期導入費から補助金を差し引いた金額に、毎月のサービス利用料を加えた総額が、BEMSの導入・利用コストになる。
BEMSアグリゲータ各社のサービス利用料や必要な装置の金額は、4月4日の時点では公表されなかった。そこで参考までに、すでに一般企業向けに提供されているNECフィールディングのBEMSサービス「エネパルOffice」の料金を見てみる。
エネパルOfficeの初期導入費は、電力を測定するためのセンサーを含む基本構成で98万円(工事費は別)、月額利用料は3万9000円である。システム構成やサービス内容はBEMSアグリゲータが提供するものに近いと考えられる(図7)。
BEMSの補助金の対象には、エネパルOfficeのシステムに含まれているセンサーなどの計測・制御設備のほかに、監視用のモニターや通信用のルーターなど監視・通信設備も加えることができる。これら一連の設備の購入費と工事費に、合計で150万円かかると想定しよう。その3分の1の50万円を補助金でまかなえれば、実質100万円で必要な設備を導入できる。
さらにBEMSアグリゲータに支払うサービス利用料を、エネパルOfficeと同程度の月額4万円で見積もると、年間で48万円。設備導入の実質負担額100万円と合わせて、最初の3年間のコストは総額で244万円になる。
これに対して節電による電気料金の削減は、どのくらい見込めるのか。東京電力が4月1日から実施した電気料金の値上げに際して、いくつかのモデルケースを公表している。BEMSの補助金の対象(50kW〜500kW)に入る契約電力150kWの中小規模のスーパーや事業所のケースでは、値上げ前の電気料金は年間で約773万円だが、値上げ後は約876万円に増えるという。
一方、BEMSの導入による電力使用量の削減率は10%以上が目標になっている。かりに年間876万円の電気料金の10%を削減できるとすれば、3年間で262万円の削減になる。前述の3年分のBEMS導入・利用コストの総額244万円を吸収できる計算だ。かりに補助金を使わなかったとしても、導入後4年でコストを回収できる。
企業向けの電気料金は、過去1年間で最も使用量の多かった30分間の電力をもとに決まってしまう。早く使用量を削減すれば、それだけ早く電気料金を下げることができる。
とりわけ補助金の対象になる企業にとっては今こそ、自社のビルや工場に最新の節電対策を実施する好機と言える。実際の電気料金の値上げ額を、BEMSの導入・利用コストと比較したうえで、できるだけ早く検討すべきだろう。
夏の電力対策、特に使用量が最大になる午後の時間帯の電力を抑える「ピークカット」に貢献できることは、企業が社会に対して果たす役割としても極めて重要である。
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