7月1日から再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まることを受けて、電力会社の送電網が少しずつオープンになってきた。新電力などの電気事業者が既存の送電網を利用する場合の料金が一部値下げされるほか、家庭で発電した電力でも送電網経由で集めることが可能になる。
東京電力をはじめ10社の電力会社が6月20日に一斉に、送電網の利用条件や接続料金の変更届を経済産業大臣に提出した。各電力会社の送電網を新電力などの電気事業者が利用するためにはさまざまな条件や障壁があるが、法律の改正を通じて緩和され始めた。
7月1日から緩和される条件で重要な点は2つある。1つは新電力などが電力会社の送電網を使って顧客企業に電力を供給するにあたって、電力会社に接続料などを支払う必要があるが、その一部が値下げになる。この接続料に関しても電力会社の料金体系は複雑に作られているので、できるだけ分かりやすく内容を説明しよう。
新電力などが顧客企業に供給する電力が足りなくなるケースがあり、その場合には電力会社が不足分の電力を供給する必要がある。これを「負荷変動対応電力」と呼び、不足分の程度によって料金が大きく変わる(図1、図2)。
新電力が電力会社と契約している電力量に対して不足分が3%以内であれば、「変動範囲内」ということで、電力会社が一般企業に販売している料金と同水準の1kWhあたり10円程度で収まる。しかし3%を超えると「変動範囲超過」となり、通常の3倍〜4倍の料金を支払わなくてはならない。今回の制度変更により、この「変動範囲超過」の料金が夜間の時間帯に限って、各電力会社で3分の2程度に引き下げられる。
これから再生可能エネルギーの固定価格買取制度が始まると、昼間に太陽光発電で作られる電力が大幅に増える見込みだ。新電力が供給する電力が不足する可能性は夜間に高まることが予想されるため、それを想定した値下げの措置である。これにより新電力が顧客企業に販売する電力量を増やしやすくなる。
今回のもう1つの重要な変更点は、家庭の太陽光発電システムなどによって作られた電力を新電力が買い取る場合に、電力会社の送電網を利用できるようになることだ。従来は企業などの自家発電による「高圧」の電力しか送電網を使って受け取ることができなかったが、今後は家庭で作られる「低圧」の電力も送電網を経由して集めることが可能になる(図3)。
発電から送電・配電までを完全に電力会社に依存しないで済むような環境が、7月から徐々に拡大していく。
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