震災で停止していた福島の火力発電所、11月下旬に試運転開始へ電力供給サービス

東日本大震災の被害を受けた東北電力の原町火力発電所が予想よりも早く運転を開始できる見込みになった。当初は運転再開を2013年の夏前と想定していたが、現場の懸命な復旧作業により、約半年早い11月下旬から試運転を開始できる予定だ。

» 2012年10月01日 11時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 福島県の南相馬市にある原町火力発電所は1号機と2号機で各100万kW、合計で200万kWの発電能力がある。東北電力の火力発電所の中では東新潟火力発電所に次いで2番目に規模が大きい。このうち2号機が11月下旬から、1号機が12月下旬から試運転を開始できる見通しになった。

 太平洋に近い場所に位置する原町火力発電所は2011年3月の東日本大震災によって、東北電力の発電設備の中では最大の被害を受けた。タービンの建屋に設置していた電気・機械設備が冠水したほか、電気集塵器などの大型設備が損壊・倒壊した(図1)。

図1 原町火力発電所1号機の電気集塵器の復旧状況。出典:東北電力

 被害が大きいことから、東北電力は2011年11月に発表した復旧計画の時点では、2013年夏の電力供給に間に合わせるために運転再開時期を同年夏前に設定していた。その後に作業員を大幅に増やすなどして工期の短縮を進め、想定よりも半年ほど前倒しで復旧できる状況にこぎつけた。

 試運転の期間は電力を供給しながら機能面や安全性を確認する。その後に正式な営業運転を開始する予定で、2号機は2013年3月末、1号機は4月末を見込んでいる。

 今夏の東北電力管内の需給状況を見ると、最大需要電力が発生したのは8月22日で、その時の供給力は1468万kW、最大需要電力との差は104万kWだった(図2)。その104万kWのほぼ全量を緊急に設置した火力発電でカバーした。ところが9月18日に緊急設置電源のひとつが停止したため、需給率が95.3%という危険な状態に近づいてしまった。

図2 今夏の最大需要電力が発生した8月22日(水)14時台の需給状況。出典:東北電力

 こうした状況から、東北電力は原子力発電所の再稼働を訴えている。ただし原町火力発電所の運転再開によって200万kWを回復できれば、今夏の緊急設置電源による電力の2倍を確保できることになる。加えて企業や家庭で今夏以上の節電対策に取り組むことによって、よほどの猛暑になるか、大きな発電所のトラブルがなければ、来夏の需給状況を心配する必要はなさそうである。

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