太平洋岸に風力発電所の集積地、洋上にも続々と建設中日本列島エネルギー改造計画(8)茨城

茨城県の太平洋岸に大規模な風力発電所が増加中だ。10〜20MW級の発電所だけでも5か所で稼働しており、今後の拡大が期待される洋上の風力発電も本格的に始まった。一方で内陸部ではバイオマス発電が活発に進み、その発電量は全国で第2位の規模に成長している。

» 2012年10月25日 09時00分 公開
[石田雅也,スマートジャパン]

 太平洋に面して長い海岸線を持つ茨城県は日本でも有数の工業地帯を抱えていて、その中に大規模な火力発電所や石油精製所がある。従来型のエネルギー供給基地として重要な役割を果たす一方で、ここ数年の間に風力発電の集積地として急速に発展してきた。

図1 茨城県の再生可能エネルギー供給量(2010年3月時点)。出典:千葉大学倉阪研究室と環境エネルギー政策研究所による「永続地帯2011年版報告書」

 茨城県の風力発電の規模は2010年3月時点の調査では全国で10番目だが(図1)、その後も発電量は増え続けている。特に風力発電所が数多く集まっているのは鹿島臨海工業地帯の周辺だ。最南部の神栖(かみす)市には1MW(メガワット)以上のメガソーラーが10か所もあり、そのうち3か所は10MWを超えている。

 中でも注目すべきは洋上風力発電の取り組みだ。鹿島港の沖合50メートルほどの海上に、1基で最大2MWの発電が可能な大型の風車7基が建てられている。2012年7月からフル稼働が始まった「ウィンド・パークかみす洋上風力発電所」である(図2)。

図2 ウィンド・パワーかみす洋上風力発電所。出典:茨城県次世代エネルギーパーク推進協議会

 さらに同じ地域の北側では、同規模の風車8基を使った「ウィンド・パークかみす第2洋上風力発電所」の建設が進んでいる。2013年3月から稼働する予定で、両方を合わせると発電能力は30MWにのぼり、国内の洋上風力発電所では圧倒的な規模になる。

 そればかりではない。同じ鹿島港沖の別の地域で250MWという世界でも有数の洋上風力発電所の建設計画がある。茨城県が中心になって推進するプロジェクトで、発電能力が大きい5MWの風車を50基も建設する。5年後の2017年から段階的に運転を開始する長期構想だ。

図3 神之池バイオマス発電所。出典:茨城県次世代エネルギーパーク推進協議会

 海岸線で急速に風力発電が拡大する一方で、陸上ではバイオマス発電の取り組みが県内の各地域で活発に行われている。農作物の生産量が全国で2番目に多い茨城県はバイオマス発電の規模でも全国で第2位だ。代表的な導入例は「神之池バイオマス発電所」(図3)で、木材やおがくずを利用した発電所としては国内で最大級の21MWの発電能力がある。

 このほかにも複数の市町村で「バイオマスタウン構想」が進行中だ。バイオマスタウン構想は農林水産省が2007年から全国に広めてきたプロジェクトで、2010年度までに318の自治体が構想書を発表している。茨城県では7つの市町村が参画して、農作物や木材、生ごみなどを使って発電や燃料の製造に取り組んできた(図4)。実際にバイオマスから作った燃料をバスや公用車で利用している。

図4 土浦市のバイオマスタウン構想。出典:土浦市市民生活部

2014年版(8)茨城:「太陽光発電で全国2位、メガソーラーが港や湖から線路沿いまで広がる」

2013年版(8)茨城:「洋上風力発電が広がる臨海工業地帯、農山村には太陽光とバイオマス」

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