来夏以降の電力不足に備えて、工場にコージェネを導入蓄電・発電機器

今夏は電力需要に対する供給量に常に不安がつきまとっていた。特に関西電力管内では大飯原子力発電所の2基が再稼働するまで、かなり厳しい節電目標を設定していた。三菱樹脂は来年以降に電力供給体制が不安定になっても工場を問題なく稼働させるためにコージェネレーションシステムを導入する。

» 2012年10月31日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 コージェネレーションシステムを導入するのは滋賀県北部の長浜市にある「長浜工場」(図1)。都市ガスで駆動するコージェネレーションシステムを2台導入する。1台当たりの最大出力は1MW(1000kW)。2台で2MWの電力を自力でまかなえるようになる。発電にともなって発生する熱は蒸気にして工場で利用する。長浜工場に自家発電設備を導入するのは初めてだという。

図1 三菱樹脂の主力生産拠点の1つである長浜工場。来夏に向けてコージェネレーションシステムを導入する

 三菱樹脂によると長浜工場の契約電力は約1万4000kW。コージェネレーションシステムで消費電力量全体のうちおよそ14%をまかなえると見積もっている。2012年11月から設置工事を開始し、2013年7月に稼働を開始する予定。

 稼働開始後は、主に夏の暑い時期にコージェネレーションシステムを稼働させる予定。これは、今夏に電力供給体制が不安になり、工場の操業を安定して続けられるかどうかがはっきりしない状態で操業を続けたためだという。「電気がいつ止まってもおかしくない状況にあったが、工場を止めて生産を止めると供給先に大きな迷惑をかけることになる」と考えながら操業を続けていたという。

 来夏の電力事情がどうなるかは分からないが、今夏のような状況が続いたら、工場を安定して稼働させることが難しくなると判断し、コージェネレーションシステムの導入を決め、来夏前に稼働を始められるように設置工事を進めるというわけだ。

 1年のうちで最も電力を消費する時間帯である夏の昼間にコージェネレーションシステムを稼働させることで、ピーク電力を低く抑え、契約電力を下げるという効果も期待しているという。

 運転を夏場に限定する理由としては、コージェネレーションシステムの運転コストも挙げられる。長浜工場は関西電力管内に位置しており、現在の契約電力と電気料金単価を考えると、ガスを購入してコージェネレーションシステムを稼働させても、電力を購入したほうが安くつくという。ただし関西電力は電気料金値上げの意向を明らかにしている。電気料金の値上げ幅や、都市ガスの価格変動によっては運転時期を考え直す可能性もある。

 三菱樹脂は滋賀県の北部に位置する長浜市と米原市に長浜工場のほか「山東工場」と「浅井工場」を保有しており、これら3工場を主力生産拠点としている。三菱樹脂全体の消費電力量のうち半分をこれら3工場で消費するという。

 今夏は関西電力の電力事情や、節電目標値をクリアしなければならないという事情があったため、空調や照明の制限や、工場を停止させて点検する時期を夏に設定するなどの工夫で節電に取り組んだ。さらに、発電機をレンタルで調達して自前で発電し、関西電力からの受電量を抑えたという。

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