電力コスト低減、ピークシフトを狙った機器が続々登場しているが、使う場所や状況によっては期待した通りの効果を得られない機器もある。その中でも高い効果を期待できると注目を浴びているのが「コージェネレーションシステム」だ。
コージェネレーションシステムとは、発電しながら発電時に発生する熱も利用するシステム。一般的な発電機は発電時に発生した熱をそのまま発散させてしまうが、コージェネレーションシステムは電力を発生させながら熱も利用するため、燃料の利用効率が高い。
コージェネレーションシステムの例としては、ガスタービン、ガスエンジン、ディーゼルエンジンを利用するものなどが挙げられる。どれも燃料を燃焼させて動力を得て、その動力で発電する。燃料を燃焼させるため、発電時には熱を発する。この熱で蒸気を発生させたり、水を加熱してお湯を沸かすという例が多い。
東京ガスによると火力発電所では、燃焼させた燃料を電力というエネルギーに変換できる割合は42%。残りの58%は熱エネルギーとなるが、発電所ではその熱を利用することなく放出する。
一方、ガスを利用したコージェネレーションシステムでは、燃料であるガスを燃焼させた結果、電力に変換できる割合は30〜42%。熱エネルギーとして利用できる分は30〜55%。利用が難しく、放散する熱エネルギーは30〜15%。合計すると、ガス燃料から得られるエネルギーの70〜85%を何らかの形で利用できる。
タービンやエンジンで燃料を燃焼させる方式のコージェネレーションシステムは、大きなエネルギーを得られるため、工場や大きなビルで利用する例が多い。温水や蒸気を必要とするホテルや病院で利用する例も多い。
最近は、ガスから水素を取り出して、酸素と反応させることで発電しながら、発電時に発生する熱を利用する家庭用燃料電池コージェネレーションシステム(エネファーム)の普及が進んでいる。一般的なエネファームは、水素で発電する燃料電池システムと貯水タンクのセットになっており、発電時に発生した熱を貯水タンクに運んで、水を加熱する。加熱した水は浴室や台所で利用できる。床暖房に利用する例も少なくない。
東京ガスによると、エネファームが発電する電力で、家庭で使用する電力のおよそ60%をまかなえるという。ガスを余計に使うことになるが、ガス会社はエネファーム導入世帯向けにガス料金を低く抑えた料金プランを用意している。
エネルギーの有効活用という面から見ると高い効果を期待できるが、一方で機器が高価であるという課題が残っている。
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