蓄電池を内蔵したサーバーが登場、ピークシフト機能の追加も視野に省エネ機器

NECはデータセンター向けサーバー「Express5800/ECO CENTER」シリーズの新製品「Express5800/E120d-1」を発売した。蓄電池を内蔵し、無停電電源装置(UPS)を不要とした点が最大の特長だ。

» 2012年12月20日 11時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 Express5800/E120d-1は、1Uサイズ(高さ約45mm)のラックマウント・サーバー(図1)。価格は税別で31万6000円から。蓄電池を搭載することで、UPSを不要としたことが最大の特長だ。

図1 NECが新たに発売するラックマウントサーバ「Express5800/R110e-1E」。本体右手前から出ている2つの箱が蓄電池

 蓄電池を内蔵することによって得られる利点は2つある。1つ目はかさばるUPSを設置する場所を用意する必要がなくなること。サーバーが密集しているデータセンターでは、従来使っていたスペースの半分が空くこともあるという。

 もう1つは、電力をより有効に利用できるようになること。一般的なサーバーをUPSと組み合わせて使うときは、商用電源にUPSを接続し、UPSに付いているコンセントにサーバーを接続する。しかしこの構成ではUPS内部で交流⇔直流変換が2回発生してしまう。UPS内の鉛蓄電池に電力を充電するときに交流を直流に変換し、蓄電池から電力を取り出してサーバーに供給するときは直流を交流に変換する(図2)。NECによると、2回の交流⇔直流変換によって電力を5〜10%損失している。

図2 一般的なUPSとサーバーの組み合わせ(上)と、充電池を内蔵したサーバー(下)の電力の使い方を比較した図

 新発売のExpress5800/E120d-1では、サーバーの電源部が直流に変換した電力を充電する仕組みになっている。停電時は蓄電池の電力を直流のままマザーボードに供給すればよいので無駄がない。NECはこの効果と、サーバー内部の空気の流れの見直し、ファンの制御方法の改良の効果も合わせて、従来製品と比べて消費電力を最大で14%削減したという。

図3 上は蓄電池を装着するスペース。最大で2つの蓄電池を装着できる。下は蓄電池を引き出したところ

 搭載している蓄電池はニッケル水素蓄電池(図3)。リチウムイオン蓄電池に比べると小型化が難しいが、半分程度の価格で入手でき、UPSのように満充電の状態を維持する用途に強いという理由で選択したという。蓄電池は標準で1つ付属し、最大で2つ装着できる。蓄電池の寿命は30℃の環境でサーバーを運用した場合なら5年だ(35℃環境なら4年半で、40℃環境なら3年)。

 停電時に電力を供給する能力は一般的なUPSと大きく変わらないという。蓄電池を2つ搭載した場合、停電時に最大で6分間にわたって電力を供給できる。これは消費電力が200Wの状態であり、サーバーに負荷がかかって大きな電力を消費しているときは電力を供給できる時間は短くなる。例えば300Wの電力を消費しているときに停電が発生したら、蓄電池から電力を供給できる時間は4分になる。

 さらに、サーバーの設定を変更することでサーバーが停電を感知した瞬間にサーバー自身に消費電力を約170Wまで抑えさせることもできる。一般に「パワーキャッピング」と呼ぶ機能の応用だ。この場合、充電池の電力を7分30秒にわたって供給できる。

 ほかにも停電を感知したら、蓄電池が電力を供給している間に自動的にサーバーを停止させることや、自家発電装置が稼働するまでの間、内蔵する蓄電池からの電力供給を続けさせるといったことが可能だ。

 NECは蓄電池を搭載したサーバーを発売したことは、あくまで第一歩であるとしている。蓄電池の性能向上やサーバーの改良を続けることで、蓄電池を利用してピークシフトを実現したいと語る。しかし、このサーバーの想定顧客であるデータセンターでは、電力需要が落ち込む時間帯がほとんどなく、ピークシフト機能の仕様をなかなか決められないという。

 NECはピークシフトのほかにも、BEMS(ビル向けエネルギー管理システム)による制御を受け付けるようにすることなども狙っている。

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