消費電力は半分で性能は6倍、細かい工夫を重ね大きく進歩5年でこれだけ進化しました(1)サーバ

最も効果的な節電策は、古い機器を新しい機器に入れ替えることだ。例えばサーバは、5年前とくらべて長足の進歩を遂げている。

» 2012年10月18日 09時00分 公開
[笹田仁,スマートジャパン]

 サーバの消費電力は5年前とくらべてどのように変わっているのだろうか。国内有数のサーバベンダであるNECに聞いた。同じような価格で2つのプロセッサを搭載しているラックマウントサーバ(厚さは1U)で比較すると、5年前(2007年モデル)にくらべて最新の製品は消費電力が半減しているという(図1)。

図1 NECの最新ラックマウントサーバ「Express5800/R120d-1E」

サーバの消費電力は半減

 具体的に数字を挙げると、2007年モデルの消費電力は待機時が476Wで、負荷がかかっているときは700W、年間の消費電力量は4824kWhになるという。一方2012年モデルの消費電力は、待機時が183W、負荷がかかっているときが473W、年間の消費電力量は2450kWhまで下がっている。

 消費電力は大きく下がっているが、性能はむしろ大きく向上している。NECの調べでは、2007年モデルにくらべて2012年モデルはおよそ6倍の性能を発揮する。これはメモリ、ハードディスク、プロセッサの性能が上がった結果だ。特にプロセッサの性能が上がったことが大きい。

プロセッサの性能は大きく伸びた

 NECによると、2007年のインテル製プロセッサにくらべて最新のインテル製プロセッサは消費電力はあまり変わらないが、性能が大きく伸びているという。消費電力があまり変わらず、性能が伸び続けるという傾向は2007年から現在に至るまで続いている。

 性能が伸びた要因としては、性能を向上させる機能を追加していきながら、半導体製造技術を進化させることで消費電力を抑えているという点が挙げられる。一般に、半導体製造技術が進化すると、プロセッサの消費電力は下がる。半導体製造技術の進化に合わせて処理性能を向上させる機能をプロセッサに搭載してきたのだ。インテルはプロセッサに新機能を搭載するときは、消費電力への影響を注意深く評価しているという。

 加えて、インテルはプロセッサの中で動作していない部分への電力供給を止める「ディープ・パワー・ダウン・テクノロジー」をプロセッサに搭載している。必要な部分にだけ電力を供給しようということだ。負荷がかかっているとしても、軽いうちはプロセッサのすべての能力を使う必要はない。使わない部分への電力供給を止めることで、プロセッサに軽い負荷しかかかっていないときや、待機時の消費電力を大幅に下げられる。

ハードディスクなどの部品も少しずつ進化している

 サーバを構成する部品の中で最も電力を消費するのはプロセッサだ。しかしプロセッサの消費電力は、5年前とくらべてもあまり変わっていない。どのようにしてサーバの消費電力を削減したのだろうか? NECによると、細かい改善の積み重ねの結果だという。

 例えばハードディスクの消費電力は1台当たり11W程度から5W程度と、半分程度に下がっている。一般にサーバは複数のハードディスクを搭載する。ハードディスクの台数が増えるほど、消費電力が下がった効果が大きく現れる。メモリモジュールには低電圧で動作するものを選んでいる。動作電圧が下がるので、消費電力も下がる。

 交流電力を直流に変換してサーバ内部に供給する電源ユニットも進化している。5年前の製品は交流から直流への変換によって電力を20%以上損失していたが、最新のサーバが搭載する電源ユニットは、変換時の損失が8%程度で済むという。

内部の部品配置に工夫を重ね、冷却に必要な電力を削減

 NECがいう「細かい工夫」の中でも、最も効果が大きいのはサーバ内の部品配置だという。部品を注意深く選定し、サーバ内の最適な位置に配置することで、小さい力でサーバ内部を冷却できるようにしている。

 最新製品では冷やすべき部品とサーバ内の空気の流れをよく考えて部品の配置を工夫している。図2はNECの最新ラックマウントサーバの内部を写したものだ。手前がサーバの前面になる。サーバ内の空気は前面から背面に向かって流れる。プロセッサは銀色のヒートシンクの下にある。前面から入りこのヒートシンクを通過した空気は、そのままサーバ背部から抜ける。電源ユニットは、サーバ背部の左右に1つずつ分散配置している。電源ユニットを冷却する空気は、メモリモジュールを通過するだけなので十分な冷却効果を期待できる。

図2 NECの最新ラックマウントサーバの内部

 サーバ内に空気の流れを作り、冷却するファンにも工夫が加わっている。かつてのラックマウントサーバ、特に1Uサイズのような薄型サーバでは、口径が小さいファンをいくつも並べて高速回転させて内部を冷却していた。ファンが消費する電力が大きいという問題もあったが、小さい口径のファンが高速回転することによる騒音がすさまじいという問題もあった。

 そこで最近のサーバが採用しているのが、「二重反転ファン」というものだ(図3)。これは、回転方向が反対になる2つのファンを備えるものだ。2つのファンは回転方向は反対でも、同じ方向に空気を吹き出すようになっている。

図3 ラックマウントサーバで使用する二重反転ファン

 二重反転ファンは、それぞれのファンが発生させる振動を打ち消し合うという特質を持っている。2つのファンを組み合わせることで、回転速度を低くしても大きな風量を得られるという効果もある。このファンを搭載した製品は、オフィスに設置しておいても問題にならないくらい騒音が小さくなっているという。もちろん、フル稼働時でも冷却性能に問題はない。NECのサーバは内部の部品の配置を工夫し、二重反転ファンを採用した結果、外気温が40℃の環境でも正常動作するようになったという。

温度センサーを利用して、必要な部分だけ冷やす

 二重反転ファンによって、冷却に必要な電力をかなり節約できたが、最新のサーバはサーバ内部の温度を検知して、1つ1つのファンの回転速度を細かく制御する機能を持っている。サーバ内部のあちこちに温度センサーが付いており、温度の上下に応じてファンを制御しているのだ。

 5年前に購入したサーバなら、まだまだ現役という企業も多いと思う。しかし、消費電力が半分で性能がおよそ6倍と聞くと、新品を導入しようかと思う人も多いだろう。

 性能が6倍まで上がっていれば、その性能を利用した大幅な節電も可能だ。仮想化の機能を利用して、1台のサーバに複数のサーバの機能を集約してしまうのだ。稼働するサーバの台数が減るので、大きな節電効果を得られる。古いサーバの台数と消費する電力を考えると、すぐにでも入れ替えた方が良いということもあるだろう。

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