オフィスで大量のパソコンを使う企業では、空調や照明の節電対策だけでは電力使用量を大幅に削減することは難しい。パソコンとモニターを合わせて2200台も使用するNTTPCコミュニケーションズはエネルギー管理システムによる自動制御で電力削減に取り組んでいる。
オフィスビルのピーク電力を30%削減――。NTTグループが昨年に続いて今年も掲げる高い節電目標だ。空調や照明の設定変更、エレベータの使用自粛、といった通常の節電対策だけでは実現するのが難しい目標値である。
ネットワークサービス事業を運営するNTTPCコミュニケーションズではパソコンやモニターなどのIT機器で全体の2割以上の電力を使用しており、この部分の節電対策なしには目標を達成できないと判断した。そこでIT機器の電力を自動制御できるシステムを2011年5月に導入して、さらなる節電対策に乗り出した。
東京と大阪に分散する3か所のオフィス全体で、パソコンとモニターが合計2200台ある。そのうちの1900台を対象に第1弾の対策として、夜間や休日に電源の自動シャットダウンを実施した。通常の業務時間外(平日20時〜6時、休日12時〜6時)に稼働している場合に、30分間隔で画面にポップアップメッセージを表示して、ユーザーが取り消しのアクションを起こさなければ、30分後に電源をオフにする。
この対策を実施した結果、電力使用量を9%削減することができた。「一般にはさほど高くない削減率に聞こえるかもしれないが、すでに帰宅時の電源オフなどの対策を実施しており、その後に上積みできた分だけで9%になる」(池田剛カスタマサービス部オペレーション担当課長代理)。
パソコンやモニターの稼働状態をもとに自動で制御する仕組みは、米ジューレックス社のエネルギー管理システムで構築した。空調や照明を含むビル全体の電力使用状況は、NTTファシリティーズのBEMS(ビル向けエネルギー管理システム)によってフロア単位のデータを見える化している。この2つのシステムを組み合わせた節電対策により、全社で使用する電力のピークを昨年7月以降、グループの目標通り2010年度比で30%以上削減し続けている(図1)。
さらに今夏は2つの新しい対策を7月中に追加する予定だ。1つ目の対策は業務時間内であっても、使われていないパソコンとモニターがあれば自動的にスタンバイ・モードに移行させる。ウイルススキャンソフトなどが稼働していない状態のパソコンが対象で、接続しているモニターもスタンバイ・モードに移行する。「業務時間外に実施しているシャットダウンと比べると、スタンバイ・モードであれば作業途中のファイルが保持されており、稼働状態への復帰も早い。業務への影響は少ないと考えている」(岡本朋之オペレーション担当)。
2つ目の対策は、より高度な制御手法を使う。CPUの使用率が低いパソコンに対して、動作周波数(クロック)の設定を自動的に「低」に変更して消費電力を削減する。5分ごとのCPU使用率の平均が15%未満の場合に適用し、15%以上になったら「高」に設定し直す。それでも実際の処理スピードには大差がなく、ユーザーが気付くことはないという。
この新たな2つの対策の効果を検証したところ、電力使用量の削減率が9%から13%に改善することが分かった。加えて従来は業務の必要性から対象外としていたパソコンやモニターが全体の15%程度あったが、これらも対象に含めることで、最大で34%まで削減率を高められる見込みである。「特にスタンバイ・モードに移行することの節電効果が大きいとみている」(岡本氏)。
節電による電気料金の削減効果も小さくない。2011年度の電気料金は2010年度と比べて約2900万円も安くなり、削減率にして35%という大幅なコスト削減を果たした(図2)。対策を強化する2012年度は、さらに電気料金を引き下げられる見通しだ。今後は全国5か所のデータセンターで稼働する数千台にのぼるサーバーの節電対策にも取り組む計画である。
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